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□隣に居たのは違う人
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見てしまった。これはいわゆる浮気というもなんだと思う。でもそれを見て冷静ではいられなくて、胸が痛くて痛くて堪らなくて。鼻の奥がツンとしてカッと目頭が熱くなった。
「バン…君…」
相手に聞こえるはずもない小さな声で呟いてその場を後にした。
「ぅ…ぅっ…ふ」
小さく嗚咽を漏らしながらうずくまる。何で。いつからだろうか。最近バン君が僕に対する態度を少し変えた。その時だろうか。
「…痛い…よっ…」
胸が痛くて、涙も止まらなくて苦しくて。何が何だかわからない。
「ジン?」
バン君の声がした。慌てて涙を拭う。こちらに近づいて来る。
「どうしたのこんな所で…って、泣いてたの!?」
「い、いや大丈夫だ。目薬だよ」
「なんだビックリした」
「それより、どうしたんだい?」
冷静を装い話を続ける。大丈夫だろうか。バン君にこの気持ちはばれてないだろうか。
「あ、それなんだけど、今度遊びに行くっていってたじゃん…あれ、また次の週末でもいい?」
「……あ、ああいいよ」
「そう?ありがとう。ごめんね」
「いや、気にする事はない」
そう言えばバン君はどこかに行ってしまった。早く決別しないと。僕の心が持たない。痛くてちぎれてしまう。
「僕は、好き…なのに」
そして本来ならばバン君と遊びに行く日に僕はまた目撃する。
「バン君…」
楽しげに笑うバン君の隣にいるのはカズ君。本来ならばそこには僕がいるはずだったのに。そう思えばそう思うほど涙が溢れてきて走ってその場を後にした。
早く、別れなきゃ。
(隣は僕の特等席だったのに)
(今はあの子のもの)
Fin.