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□それはまるで神経衰弱
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「今、俺が何思ってるかもわかんないの?クズ」
拳がまた僕に当たる。痛い。また痣が出来てしまったんじゃないだろうか。
「ごめんなさ…っ」
「もういいよ」
「ぐっ!」
最後に決められたお腹に入れられた蹴りで僕は気を失った。ただ眠っている間の鈍痛が段々薄れていくのを感じながら僕は深い眠りについた。
「ジン、ジン起きて」
「ぅ…ぐ…バン君…」
「ねぇ、喉渇いた」
「ぁ…うん…すぐ用意するね」
ちらっとバン君のポケットから覗いている釘と金づちを見て身体から血が引いた。これは、間違えられない。
身体の痛みなど忘れ、すぐに冷蔵庫のところまで走ってどびらを開ける。バン君の好きな飲み物は何だ。オレンジジュース。前にそう言っていたような気がする。
「オレンジジュース……」
腕を上げた瞬間、前に蹴られた脇腹が鋭く痛んだが、我慢してオレンジジュースを取る。コップに注ぐ。そしてまた急いでバン君の待ってる部屋に戻る。
「遅いよ」
ピッと釘を投げられそれが頬をかすって肌が切れた。それが鋭いことは解りきっていることだが、目に当たらなかった安堵が押し寄せてホッと息を吐いた。
「ごめん、ね…はい、ジュース」
「あ、オレンジジュース!わかってるね!流石俺のジンだよ」
チュッとキスをされてにこやかな顔で傷は大丈夫?なんて聞かれた。さっきとの態度に驚く人も多いだろうがこれが僕に対するバン君なのだ。
バン君の気持ちをぴったり当てないと僕に暴力が降り懸かってくるのだから、僕の神経も研ぎ澄ますしかない。
「ジン、次は…」
バン君の気持ち(思考)と僕の気持ち(理解)をぴったりに。
(次はどんなカードがめくられる?)
Fin.