TEXT4

□たくさんの
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「あ、ジンちょっとグリス貸して…忘れちゃったんだ」

「ああ構わないよ」

みんなでLBXのメンテナンス中バンくんが僕のグリスを使った。忘れるなんて珍しい。ヒロの方をちらりと見るとランたちと騒いでいる。こういうのも平和でいい。

「ありがと…あ、ジンここまだヒビが」

「ああ本当だ…ありがとう」

トリトーンにグリスを塗りこむ。すこしバトルを控えようか…。それとも戦い方を変えるか…どうしようか。トリトーンが壊れてしまっては元も子もない。できるだけダメージの少ない戦い方がしたいが…それでは戦力に劣るか…いろいろなことを考えていると最初にランが、次にジェシカが。ユウヤバンくんと順にメンテナンスを終え、部屋を出ていく。それを目で見て頭が認識しないまままた考え事を巡らせる。

「…ーん、聞いてます?ジンさーん!!」

「ん…あ、ヒロ…なんだ?」

「やっぱり聞いてなかった…もう」

すまない…と一言謝ってまた考え事にふけろうとしたときガチャンと鍵の音がした。パッと顔を上げる。ヒロが鍵を閉めたみたいだ。一体なぜ…。ヒロがこちらに向かってくる。

「なんで鍵を…」

「僕と二人っきりで何しますか?」

「ヒロ、そんなことは…」

聞いてない。その言葉を言う前にヒロに肩をつかまれた。その意外な強さに少し眉をひそめる。ヒロは薄ら笑いを浮かべているけど目はほぼ笑ってない。僕は…何かしただろうか。

「バンさんとばっかりずるいですよ」

バンくんと一体何が関係…あ、もしかしてさっきのグリスの時だろうか。ヒロは嫉妬してくれたんだろうか。そうだったら嬉しいな…そんなことを自分で考えて赤くなる。でもそれがヒロにはバンくんとのことを思い出して赤くなってると勘違いされたらしくて、ぎりっと力が入った。肩の骨が軋む。痛い。

「ヒロ…い、たい…」

「そんなにバンさんがいいなら別れてあげますよ?」

「ちがっ!嫌だ…」

なにがですか?バンさんの方がいいんでしょ?ジンさんは。なんていうヒロの目には怒りしかない。だんだん怖くなってきて、じわりと目に涙がたまる。ヒロッ…怖い…。

「好きなのは…ヒッ…ヒロだから…!」

「本当に言ってるんですか?嘘はいいですよ」

「本当…本当だから!」

「じゃあ…キスしてくださいよ」

そうしたら許してあげます。そういわれてヒロの頭をつかんだ。ぇっ。っと小さな声がヒロから洩れたが、ガッと口をつける。すこし歯がぶつかってカチッと音がしたが気にしない。ヒロともっと一緒にいたい。別れたくない。そう思って苦しくてもずっと口を離さなかった。

「ぷはっ…!も、もういいです!」

「ヒロ…僕、は」

「ジンさん、もういいです…気が変わりました」

「じゃ、あ許してくれるのか…?」

「本当に…ジンさんは可愛いんですからぁ…僕が嫌いになるわけないじゃないですか」

あっけらかんとそういうヒロ。ジ、じゃあ今までのはすべて演技…?僕がしてきたことって一体…冷静になって考えると顔から火が出るほど恥ずかしい。そしてふつふつと怒りが込み上げてきた。

「演技です!驚きましたか?まさかジンさんがあんnぶふぁっ!!?」

「ヒロ、反省するまで僕に近寄るな」

ヒロを一発殴って(手加減はしたつもりだ)、僕は鍵を開けて部屋の外に出た。少し頭を冷やそう。シャワーを浴びたらバンくんとバトルでもしようか。今日はなんだか勝てそうな気がする。


fin.
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