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□七夕
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今日は七夕。一年に一回おり姫様と彦星様が合える日。ロマンチックだと思わない?そうランが話しているのを聞いた。そういえばもうそんな時期か。ダックシャトルで世界を駆け巡っていたら気温も違えば季節も違う。感覚がくるってしまっていたようだ。日本にいるころは梅雨時とあってか雨続きで天の川なんて見たこともなかったけど、ダックシャトルで雲の上を飛んでいるから今日の夜、窓の外にはきれいな天の川が広がるだろう。
「ねぇ、七夕ってなんなの?日本の伝統芸能?」
「ジェシカさん違いますよ!」
「私が説明してあげる!」
「僕が聞いた話ではね、」
日本人ではないジェシカが疑問の声を上げるのは当然だ。素朴な疑問にヒロ、ラン、ユウヤが自分が教えるっとジェシカに話しかける。そんな微笑ましい光景を見ながら俺はどうせ必要になるだろう短冊を作りに部屋を出た。
「えーと…この辺に色紙があったんだと思ったんだけど…」
がさがさとその辺をあさってみる。すると赤や緑の色紙が数枚出てきた。これを切ればいいかな。その紙を持って部屋に戻る。確かハサミがあったはずだ。廊下を歩いていると向こうにジンが見えた。
「ジン!」
「バンくん?」
「ちょっと紐かなんかとってきてくれない?」
「ああ、わかった」
ジンはそういうと左の部屋に消えた。あ、穴開けないと。穴あけパンチは部屋にあったかな…。まあいいや。
「そういうことなのね!!」
部屋に帰るとジェシカが目を輝かせていた。どうやら意味が分かったらしい。俺はその横で手早く紙を切る。穴あけパンチで穴を一つあけて、短冊の完成。それとほぼ同時にジンは紐を持って部屋に帰ってきて、俺に渡した。
「みんな、七夕と言えば短冊だろ?」
「!」
わー!書きたい!とみんなが一つずつ短冊を手に取った。こんなに喜んでくれるとは…作って正解だったなぁ。ジェシカにカラーぺンを借りてみんなが短冊に願い事を書く。叶えばいいけどなぁ…。
「できた!」
「でもどこに吊るすんですか?」
「確かに笹がないね…」
中国に行ったときにとって来ればよかったね。とランが言った。いやいや。それだったらもう枯れちゃってるよ…。
「この観葉植物でいいんじゃない?」
ジェシカがさしたのはよくある観葉植物。ダックシャトルにある植物と言ったらこれだけだ。みんなもそれでいいか。と案外適当でそれにジンが持ってきてくれた紐で短冊を吊るしていく。
「ヒロなんて書いたの?」
「僕は、センシマンになる!です」
「ヒロらしい願いね〜」
ランが呆れたように言う。ランだって武道を極める。とランらしすぎる願いなのだが。微笑ましい光景を見ながら、俺も短冊を吊るしに行く。吊るし終わったらしいジェシカが今日は七夕らしいお菓子を作るわ!とキッチンの向かったのを見てラン、ヒロ、ユウヤもそれについていく。
「あたし味見する〜」
「ずるいですよランさん!」
「僕も手伝うよー」
取り残されたジンと俺。みんなの短冊を見る。と言ってもランとヒロのはもう知っているからジェシカとユウヤのなんだけど。
「ユウヤはみんなの力になれますように…か」
ジンが少し嬉しそうに言う。そりゃあずっと不安定なユウヤを見てきたんだもんな。こんなに回復して今では俺たちの力になりたいと言っているんだ。嬉しくないはずない。
「ジェシカは…えっ…ジン…読んで…」
英語で書かれているから全く読めない。かろうじてHAPPYという単語は読めるが…。ジンに頼むとジンはそれに目をやって、口を開いた。
「1年間みんなと幸せに暮らせますように。だな」
「へぇ…みんなと、か」
そういえば、ジンはなんて書いたんだろう。見せてと言ったらジンは短冊を渡してくれた。そこに書かれたきれいな字に目を向けると、『ありがとう』それだけし書かれていなかった。俺はジンを見つめる。なんで短冊にこんな事…。
「僕が七夕をしたのなんてすごく昔の事なんだ…もう願うも忘れてしまうほど…」
俺の怪訝そうな顔でジンは理解したのかジンは俺の手から短冊を取ってそれを吊るしながら話してくれた。
「お祖父様と過ごし始めてからはこんなことしなかったからね…だから、今回七夕ができて懐かしかったし、嬉しかったんだ」
だから、ありがとう。そういってジンははにかんだ。なんだよ。俺の願いが私欲にまみれてるように思えてくるじゃん。こんなこと言われたらさ…。まぁ本当にそうなんだけどね。
「バンくんの願いは…?」
「ジンと結婚すること」
以上!と言ってその場を駆け出した。ああもう。ジンはその場にかたまってしまってるけど、後でヒロたちが何とかしてくれるでしょ。俺の短冊を見た人はなんて思うかな…。ああやっぱりって思うんじゃないかな。もう俺らの関係を知らない人はいないし。絶対叶えてやるんだから。で、これからもジンと七夕の短冊を書き連ねてやる!
(「あ、あいつら粋なことすんな…おーい宇崎の旦那ぁ」)
(「なんだ?…ああ七夕か」)
(「俺らも書きません?」)
(「いいな」)
fin.