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□紅い宝石
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最近体調をよく崩した。それでいよいよ倒れそうになって病院に行った。そこで知らされたのはまさかの宣告。「余命2か月です」そんなにびっくりはしなかったと思う。ああそうか。僕はあと2か月で死ぬのか。そんな考え。きっとその時はよく理解できなかったんだと思う。だって誰しも、いきなり後2か月で死にますなんて言われてすぐに理解できる?僕にはそれができなかったんだ。だから家に帰ってしばらく経って、やっと理解したとき枕を濡らしたし、どうしようもない死の恐怖におびえた。なぜ…僕なんだ。

「坊ちゃま…学校はお休みになられた方が…」

「大丈夫だ…それに、今のうちにバンくんたちと会っておきたいんだ」

そう。動けるうちに。
僕はあえて延命なんてものはしなかった。延命治療がどれほどつらいか知っているし、医者は若いから治る見込みもあると言っていたが余命2か月でそんな奇跡は起きないとわかっている。じいやの制止をいなして学校に行く用意を始める。いつも来ている服を着て、CCMを持って、完璧に用意して、家を出た。僕が死ぬってことは誰にも知られないようにしたい。いつも通り振る舞っていつの間にか。転校したかのようにそっといなくなる。これがいいか…バンくんにはどう説明しよう…それはまた追々でいいか。

「おはよう」

教室に入るとバンくんはもう席に座っていた。僕はその横に座って少し痛んだ体を落ち着かせる。延命は断ったけれど動けるようにと薬は出してもらった。副作用に少し体が痛むのがたまに傷だ。

「おはようジン!今日みんなで遊びに行くんだけどジンも来る?」

「ああ。ぜひ行かせてくれ」

「わかった!」

こうやってバンくんと話しているとき、みんなと触れ合っている時僕はすごく幸せで自分が病気なんだということも、もうすぐみんなと会えなくなってしまうことも忘れていた。しかし遊んでいる最中に体調が悪くなったりして、いきなり現実に引き戻される時もしばしばあった。

「ジン!今日は…久しぶりにデートしない?」

バンくんと付き合ってもうどれくらいたつだろうか。お互いもう何も言わなくても通じ合うものがあるくらい僕たちは愛し合っていた。でも…こんなに好きな人を置いて僕は先に行ってしまうのか…と考えるとどうしても悲しくなってバンくんがいないところで泣いた。その間にも刻々と僕の体は終わりを迎えようとしていて。自分でも弱っていくのが分かった。体重はどんどん落ちるし、体温も上がらない。行きたくて仕方ない学校も休みがちになってしまって、悔しくて悔しくて泣いた。涙が止まらなかった。

「ジン、好きだよ」

「僕も…好きだ」

久しぶりに学校に行って、バンくんと二人で屋上に出て、本当に幸せで、バンくんと一緒に居るだけで幸せになれた。バンくんと一体化できたらいいのに。そんなことを考えながらバンくんとキスして。これが最後のキスになるとは思ってなかったけど。……そうやって、僕の命がなくなるまで少しずつ幸せを集めようとしていた目先のことだった。

バンくんが感染症にかかって…失明…?
僕は一体どうすればいいんだろうか…。





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