TEXT4

□悲しい愛をあげる
2ページ/3ページ


それから幾日か経って私は退院した。子供と一緒に。そしてバンくんに言ったように一戸建てを買ってじいやに手伝ってもらいながら家具を並べた。もちろん両親とお祖父様の仏壇も忘れずに。家は高台の方にあって、後ろには山がある。景色もきれいだ。小学校に上がったらそこには車で送っていこう。

「太陽、ご飯だよ」

子供にご飯を上げて私は慣れない家事をこなす。たまにじいやに助けてもらったりして、順風満帆とはいかないけれどごく普通に生活ができていた。


でも。3年経って子供が成長して私の言うことを聞いてくれなくなった。常に何かをやらかして私は終始イライラしていた。気づいたら手を上げていて子供を泣かしてしまっている。そんな自分が怖くて、なぜかこれを知られてはいけないと思って長袖を着せた。家からもあまり外出させなくなった。遊ばせるのはいつも庭。バンくんにはあの病院で会ってから一度もあっていない。最近免許もとったし一度会いに行ってみようかな…。

「ジン、遊びに行っていい?」

そう聞いてきたのはアミさんだ。アミさんは高校を出るなりカズくんと結婚して、今は幸せいっぱいだろう。そんなアミさんが家に遊びに来て、ちゃんと太陽のことも紹介した。今日は泊まっていくらしい。

「紅茶でいい?」

「ありがとう。きれいな家ね」

「狭いでしょ」

「十分広いわよ」

アミさんに紅茶を淹れて、ソファに座ってもらった。太陽がまた部屋で遊んでいる音が聞こえる。後でちゃんと言って聞かせないと。片付けなさいと。

「ジン、バンとはもう…」

「いいの。私はずっと待ってるから」

「そう…」

そのあとは話に花を咲かせて、それから太陽も一緒に買い物に出かけた。たくさん買い物をして、私に高校生のような生活ができているのかもしれない。というような錯覚をもたらした。

「ジン、久しぶりに笑ったんじゃない?」

「…そうかもしれない…」

「太陽くん、何か食べたいものはある?」

「アイスが食べたい!」

「太陽、アイスが食べたいです。でしょう!」

「ジン、いいのよ」

「ごめんね、しつけ不足で…」

本当に私は…ちゃんと太陽をしつけないと…。私の子供なんだから。本当に父親のようにならないように…。そのあとアイスを食べてまた家に帰った。

「アミさん、先にお風呂入ってて。ご飯作っておくから」

「いいの?」

「ええ」

「じゃあ太陽くんいれておくね」

「!いいの、太陽は私が入れるから」

「いいわよ任せて」

そう言ってアミさんは太陽を連れてお風呂に入ってしまった。私は一体どうしたらいいの……。手早くご飯を作ってしまって、ソファに座った。アミさんになんて言おう。気づけばたくさんの言い訳を考えていた。そうしていればアミさんと太陽は上がってリビングに帰ってきた。

「ジン……あんた…」

「アミ…さん…」

それから太陽にご飯を食べさせて寝かせると二人で話し合った。アミさんは頭を抱えて溜息を吐く。私はどうしたらいいのかわからなくてギュッとスカートを握った。

「あの痣…あんたがつけたの?」

「うん…言うこと聞いてくれなくて」

「あのね、自分がなにしたかわかってる?力加減間違えたら死ぬよ?」

「でも…私は…」

「どうするの?私は口外するつもりはないけど」

「お願いアミさん…定期的にこの家に来てくれないかしら」

「いいけど…きをつけなさいよ」

それから深夜まで話をしてキリのいいところでアミさんは、じゃあ寝ましょう。そう言って私が用意した布団に向かって歩いて行った。私も寝ようと寝室に向かった。そして翌日の朝朝食を作って太陽に食べさせる。こぼしても怒らない。きわめて優しく…。

「じゃあ私は帰るわね…気をつけなさいよ…ジン」

「ええ…ありがとう…」

それからまた…二人きりの生活が始まる。とこ時ヒロに似ているところがあってドキリとさせられる。なんだか本当に現実を見せられて泣きたくなる時がある。

「お母さん、誰か来たよ」

「ああ、ありがとう」

「たっきゅーびん?の人」

「宅急便ね。ありがとう」

ハンコを持って玄関を開けた。そうしたら帽子を深くかぶった人がハンコをお願いします。と言ってきて私は何の疑いもなくハンコを押した。そうしたら中身の確認をお願いしますと言ってきて、私は箱を開けた。

「!!?」

箱を開けた瞬間中からスプレーのようなものが出てきていきなり眠たくなった。倒れそうになったところを宅急便の人に抱きかかえられて、そのまま持ち上げられる。

「や、め…」

太陽を家に残したまま私は意識を失った。
肌寒くて目を開けるとなぜか四肢は鎖につながれていた。前を見据えるとそこには私を連れ去った宅急便の人がたっていた。

「目が覚めましたか?」

「あなたは…!」

振り返った。その顔は、あの日から一度も忘れたことのないあの顔だった。

「ヒロ……」

「お久しぶりですジンさん」

ヒロが近づいてくる。なんで今…今こんな。ヒロはなんで私のことが分かった。なんで接触してきた。なぜ。頭の中には疑問符がたくさん並んでいたが、それよりもあの時の記憶がフラッシュバックする。身体が動かない。

「な、なにを…」

「また、あの時みたいなことしましょうよ」

「や、やめて!もう許してよ!」

「ほら、今度はきっと気持ちよくしてあげますよ」

そう言ってヒロは私の服を引き裂いた。少し冷たい外気に肌がふれて鳥肌が立つ。それに恐怖で震えが止まらない。抵抗ができない

「また…綺麗になりましたね」

そう言って腰を持ち上げた。太ももに手を滑らせて、それから無理矢理キスしてきた。時がたってずいぶんがっしりしたヒロだけどやる順序は変わっていない。

「ジンさん、いい匂いだ」

「ひっ…ヒロ…やめ…」

「嫌がってるのに…濡れてるんだ」

「嫌…いやぁ…」

そう言っても行為は止まることを知らない…ヒロの手は私のパンツの中に滑り込んでくる。それから周りをゆっくりとなでると指をいきなり突っ込んできた。あまりのことに声が出た。

「いいんですか?」

「や、ゃだっ…」

そう言ってもヒロはぐるぐると指をかき回すように動かして、恐怖に何もできず硬直していると、逸物が入ってきた。ビクリと体が揺れる。ヒロは欲望のままに動いて、私は気を失いそうだった。

「っう、ぁ、助けて…ぁっああ!」

「ジンさん…」

ヒロは何回も何回も果てた。そして満足したのかバイブで蓋をして自信を拭った。そしてまたつなぎを着ると私につけていた鎖をはずした。一瞬理解ができなかったけど、緊張が解けてその場に崩れた。ヒロは歪むような笑みを浮かべて私に背を向けた。

「じゃあまた…ジンさん」

「…………ぅ…あ…」

そう言ってヒロはその場から姿を消した。私は怖くてまた泣いた。あの時のように。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ