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□なぜ君が
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※W33話改変


僕が駆け付けた時にはもう遅かった。

ヒロとユウヤのパーティでアダムとイヴを停止させて。大空博士の協力のもと僕たちはレックスに会ったというバンくんのもとに向かった。とにかく急いだ。何か嫌な予感がした。あのレックスだ。何をしてくるだろう。ましてはここはオメガダインの大切なコントロールセンターだ。早くバンくんの顔が見たくて、速く無事なのを確認して安心したくて僕は走った。

「バンくん!!」

自動ドアを半ば押し開けるようにその部屋に入って彼の名前を叫ぶ。しかしそこにはもうレックスの姿はもちろんバンくんの姿も…二人の姿だけが忽然と消えていた。ヒロとユウヤが倒れていたアミとカズを助けるのを視界の端にとらえていながら僕はそれを手伝わなかった。とにかくバンくんのことしか頭になくて、電話を掛けた。もしかしたら隠れているだけかもしれないと物影から何からすべて探した。その時何かが足元で光った。視線を落とすとそれはエルシオンの槍だった。すぐに拾い上げる。きっとレックスにかなわなかったんだ。それで、きっと彼のことだからアミとカズを助ける代わりに自分ひとり捕まったんだろう。レックスもバンくんが狙いだったとは思う。けどだからこそ、そんな交換条件を彼に持ちかけたのかもしれない。色んな憶測が頭を飛び交う。頭が痛くなってきた。僕はどうすればいい。バンくんは今どこにいる?どうやったら助けられる。ここの空調は寒いくらいにきいているのに汗が止まらない。呼吸が荒い。震えも止まらない。パニックだ。苦しい。声が思うように出ない。

「ジン、おい、ジン!!」

「っは…!ぁ…あ…バンくんが…」

「落ち着け。バンの場所はわかってる、今から助けに行くぞ」

「…ぁ………ょ……か…った…」

「ジン!おい!!大丈夫か!?」




気づいたらダックシャトルのベッドで寝ていた。バッと起き上がる。バンくんを助けに行かないと。倒れてしまったのだろうか。朝から少し貧血気味だったから…。でそんなことよりバンくんを。バンくんが…敵か…。昔に戻ったみたいだ。でも、逆。今度はバンくんを僕が止めないといけないんだ。僕が、助けないと。あの時バンくんが僕を助けてくれてみたいに。

「みんな、」

「ジン!大丈夫?」

「ああ、バンくんはどこにいるんだ?」

そこから説明を受けた。やっぱりバンくんは一人でレックスについて行ったらしい。自分がバンくんを助けれなかったことが悔しくていつの間にか手を握りしめていた。しかしあの時拾った槍を持ったままだったのか鋭い痛みが走った。血が出ているだろう。でもそんなことはどうでもいい。むしろ戒めになる。バンくんを助けれなかったら…いや、かならず助ける。

「着いたぞ!」

「!」

「隙を見て入り込む。準備しろ!」

「はい!」

僕はトリトーンを持つと武器をやりに持ち替えた。少し血がついてしまったか。シーホースアンカーは一応のための持っていくが、できる限り槍で戦おう。キッと前を見据える。オメガダインの基地だろうか。黒い建物が見えてきた。

「ジン」

「なんだ」

「すこし、気負いすぎじゃない?」

アミがそう言って僕の手を握った。その手は温かくて、僕の手が冷えていたことが分かった。でも、なぜそんなに落ち着いていられるんだ。バンくんが、仲間が…さらわれたんだぞ…?ましてや敵になってしまったんだ。それなのになぜ…君たちはなぜそんなに落ち着いてられる。

「君たちは…心配じゃないのか…?」

「心配よ…すごく」

ならなぜ…そうやって。君たちは僕よりずっとバンくんと…なのに。僕は…

「でも、俺たちならバンを助けられるって思うんだ」

「カズ…」

反対の手をカズに握られる。僕よりも全然大きくて、アミの手とはまた違ってなんだか安心した。二人とも、温かい。

「ジンさん!大丈夫ですよ!バンさんなら」

ヒロ…。

「あたし達がいれば助けられるわよ」

ラン…。

「ジンくん、…大丈夫」

ユウヤ…。

「俺も手伝ってやるし」

アスカ…

「バンが帰ってきたらパーティしましょうね」

ジェシカ…。

「一緒に。助けに行きましょうジン」

「ああ、俺たち全員でな」

アミ…カズ…。

「僕も…頑張るから…協力を頼む…」






そうして乗り込んだオメガダイン。その中は予想外にがらんとしていて正直拍子抜けだった。ただ、奥に行くほど嫌な気分になる。まるで、僕たちを待ち受けているような気がして。慎重に、でも急いで僕たちは奥に進んだ。

「ぁ!」

「!?」

ガタン!と大きな音がして床が揺れた。僕たちはその場に止まり前を見た。カランカランと車輪の音がする。僕たちは電気の付いてない真っ暗な方をじっと見て、待つ。きっとレックスだ。

「来た……か……」

レックスが僕たちに話しかける。待っていたと。だんだん、僕たちに近寄ってきてその姿が見え始めた。僕の心臓が跳ねた。まさか、本当に生きていただなんて。お祖父様を殺した…あの…。

「檜山ぁあああ!!」

自分が抑えきれなくて、動き出す前に掴まれた腕を振り払って僕は走り出していた。殴りかかる勢いで。自分の中が煮えたぎるように熱い。この気持ちに整理がつかなくて飛び掛かった。
でもそれもすぐに冷まされることになる。

「やめろ」

ダン!と拳を受け止めたのは檜山。ではなく車いすを押していた…彼だった。目に光はない。体温が冷たい。これは…バンくんじゃない。

「バンくん…」

「!」

みんながハッと息をのむのが分かった。それほどまでに彼…バンくんは変貌していた。かつてのあの明るいバンくんのかけらはどこにもなかった。檜山か…この一人の男が君をそこまで変えてしまったのか。

「ここは…通さないよ」

「バン!目を覚まして!」

「俺と……戦え」

1対8。卑怯だと思う。でも、君を助けるためならなんだってやってやる。Dエッグの中で光のないバンくんの目を見つめた。

「君を…必ず助ける」

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