TEXT4

□敵わない
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「ジンさーん」

「どうした?ヒロ」

「勉強教えてください!」

「ああ、わかった。どこがわからないんだ?」

よし!ジンさんとの時間が作れた!僕は抱えていたワークをテーブルに広げる。ジンさんに寄り添って、ここなんですけどぉ…なんて少し甘えたような声を出して見る。ジンさんにこの緊張伝わってないかな…。
僕はジンさんが好きだ。バンさんという敵わないくらいの彼氏がいるってこともしってる。でも、好きなんだ。気づけばずっと目で追ってるし、ジンさんのことを考えるだけで心が高鳴る。初恋がかなわないなんてどこかで聞いたジンクスみたいだ。

「これは…って聞いてるか?」

「あ、はい!」

「僕の顔になにか付いているだろうか…」

う、わわわわわわわ!しまった!つい見とれてしまった!絶対変に思われたよな…でも…かっこいいんですもん!ジンさんを見てるだけで幸せになれるんですよ!ある意味僕ってすごくないですか?なんて考えてニヤつくとジンさんは勉強に集中しろ。とデコピンをしてきた。うおおおおおジンさんからのボディタッチです!この痛みも愛せます!サディストなんですか?サディストなんですねジンさん!

「はーい」

「これは化学変化が行われるから」

「ああ…そういうことですね」

うーんジンさんに教えてもらう勉強…全く集中できない上にはかどらない!そして頭にも入らない!しかし幸福感だけは積もっていくというなんとも複雑な勉強である。まぁそこは?もちろんジンさんをとりますよね!バンさんが来ちゃったらジンさんも行っちゃうんですけど。

「わかったか?」

「あ、はい!ありがとうございます」

「なら僕は行くからな」

「えっ行っちゃうんですか」

「?…勉強はもう終わっただろう?」

あ、そうだ。僕は勉強という名目の元にジンさんを呼び止めてたんだ…もうちょっと一緒にいたいけど…迷惑をかけて嫌われるのも嫌だなぁ…。うーん…ここは一回引かないと…。

「あ、そうですね!すみません」

「ああ、復習しておいたほうがいいぞ」

「はい!また夜に教えてもらってもいいですか?」

「ああ、また夜な」

そう言ってジンさんは出て行ってしまった。あー…カッコよかったなぁ…。お母さんアンドロイドジンさんとか作ってくれないかな…。まぁそんなこと考えるくらいには末期な僕です。自分から進んで宿題をやる方ではないのでジンさんがいなくなったらワークは放りっぱなし。センシマンのDVDでも見ようかな…。そう思ってテレビをつける。

「わー!!きました!第一話!ここの怪物がいいあじだしてるんですよね!」

ひとりで興奮してひとりで騒ぐが、部屋には誰もいないのだからなんだか虚しくなる。まぁ寝転んでみても誰にも咎められないだろう。とゴロンと寝転がる。その時カツンとなにかが手に当たった。

「ん…?」

その感触の方に目をやるとそこにはジンさんのCCMが落ちていた。あ、これは届けないと…もしバトルするってなった時CCMがなかったら何もできないし、探しているかもしれない。早く届けないと!センシマンを一時停止するのも忘れて僕は部屋を出た。

「ジンさー…」

その時ジンさんとバンさんの声がした。さっと体を隠してしまう。なんとなくだが会話が聞き取れる。こんな、盗み聞きのようなことをしていいのだろうか。心臓が別の意味でドキドキする。でもここから離れようとはしなくて本当に複雑な気持ち…。

「ちょっと…バンくん…」

「いいじゃんジン」

「でも…誰か来たら」

「大丈夫だよ」

大丈夫じゃありませんよ…。僕がものすごく近くにいます!ギュッと手を握り締める。なんだろう、ものすごく胸が痛いや。バンさんがジンさんに迫ってるのがわかる。それでも止めにいけないのはバンさんとジンさんがそういう関係だって知ってるから。失恋だってわかってるのに、諦めれなくて、もう、どうしようもない。ボロボロ涙が溢れてくる。どうしよう。CCMを渡すときに顔を合わさないといけないのに。無理やり涙を拭う。

「ジン好きだよ」

「ん…僕も…好き…」

ああ、もう…敵わない。いつだってバンさんは偉大で、僕の持ってるのもすべてを持ってる。最初から敵わないってわかってるのに、傷つくって知ってるのに。止まらない涙をそのままにして僕はその場をあとにした。CCMはにぎりしめたまま。また…ご飯の時でいい。そのときまでに、なんとか、いつもの僕に戻らないと。そうだ、センシマンをつけたままだ。それを見ればいつもの僕に…。そうすればいつか…振り向いてもらえるって思える…。



fin.

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