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□君だけ見てるよ
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ねぇ、ジンってさ、本当に可愛いんだよ?でも最近ね?俺というものがありながらほかの人に優しくするんだ。話しかけるんだ。笑顔を振りまくんだ。俺とはいつもどおり。でもほかの人との関わりは増えたんだよ?これってさ、俺に対しての裏切りだよね?だってジンは俺のものなんだからさ、俺だけに尽くすのって当たり前だよね?

「ジン」

「あ、バンくんどうしたんだい?」

ヒロとの会話をやめて俺の方を振り返った。こっちに来て。と手招きすると、ジンはヒロにすまないと謝ってから俺の方に来た。なんでヒロと話してるのっていうのは聞かないであげる。だって今から楽しい事するもん。ジンが反省するまでね?

「なんだい?バンくん」

「ねぇ…ジン」

カチャリと後ろ手でドアの鍵をしめる。NICSは大きな施設だから一つくらい空部屋があったっておかしくない。昨日のうちに調べておいて正解だったよ。ジンは鍵がかかってることに気づいてない。あらかじめ壁に立てかけておいた木の棒を取ると。ジンを突き飛ばした。ジンはいきなりの攻撃でよろけたあと、後ろに尻餅をついいた。俺はLBXでも槍を使ってるからこういうのは得意なんだよね。

「ゲホッゲホッ!なに…するんだ…」

「何するんだ?棒で突いたんだよ」

意味がわからないといったような顔をしたジンを床に押さえつけてその上にのしかかった。細身のジンだからすべての体重をかけてしまったら潰れてしまうかもしれない。でもそれでもいいけど。だって俺だけのものになってくれるんでしょ?

「なんのつもりだ…」

「なんのつもりもないよ。ただ反省してもらおうと思って」

「反…省……?」

「そう、反省。だってジン、俺というものがありながらほかの人に優しくするんだもん」

そりゃあ妬いちゃうよねぇ?とニヤリと笑ったらジンの瞳に恐怖がちらついたものだから楽しくなった。何をしてやろうか。とびっきりの恐怖と痛みを教えてやらないと。

「ジン、これなんだかわかる?」

「っ…!?」

俺が取り出したのはナイフ。包丁よりも小さいけど、切れ味は抜群!昨日念入りに研いだしね。首にナイフの腹を当ててみる。ジンの肩がビクリと跳ねた。怖いの?ねぇ怖いんだよね?ジンの冷や汗が止まらない。息が荒い。ほら、怖いって言えば?やめてって懇願すれば?誰だって頸動脈を切られると思ったら怖いんだよ?

「バン…く…な…に……を……っ」

「ジン、泣いてるの?かわいそう…」

涙がジンの頬をツーっと伝う。そのジンが異様に愛しくて俺はナイフの刃をしまってぎゅっと抱きしめた。心臓の音が速いや。本当に可愛いなぁ。でも、ジンが悪いんだ。俺を裏切ったんだから、それは報いを受けてもらわないとなぁ。

「バン…く、もう…や、め…て」

「んー…それは、無理かな?」

俺に跨られた状態でジンが俺の頬に手を滑らせる。冷たいし震えてる。でもね、ジンのこの白い肌に血が流れるのってすごく綺麗だと思ったんだ。さっきしまったナイフでジンの服ごと腕を切り裂く。ビシュッと血が舞った。

「っぁ…!!っ…ああぁあぁぁあぁああ!!!!?」

「ちょっと痛かった?でも、いいよ。映えてる」

綺麗だよ。と耳元で囁く。大丈夫。血管は切ってないから死にはしないよ。ねぇ、他はどこがいい?次はジンに決めさせてあげる。ジンの腕に舌を這わせる。生温かい液体。ジンのだと思うとすごく甘く感じて、鉄の味なんてしなかった。

「ねぇ、次はどこがいい…?」

決めていいよ。と言わんばかりの目で見つめる。ジンは無事な方の右腕で切られた左腕を押さえる。はぁはぁと息を切らせて痛みを少しでも紛らわせるためかグッと口を結んでいて、綺麗だけど、でも、無様。
あのジンだよ?いつもクールなオーラ振りまいてるジンが俺の下敷きになって、腕を切られたくらいで顔を涙と鼻水でグシャグシャにして、ごめんなさいごめんなさいとすがってくる。従順なジンは大好き。でもね、こんな無様なジンもひっくるめて俺は大好きなんだよ。俺なら愛してあげる。俺だけだよ?ねぇ、もう俺しか見ないって、俺を裏切らないって言うんだったら許してあげるよ?ほら言いなよ。

「ごめんなさ…っ…ごめ…ぁ…き…らないで」

「俺が聞きたいのはそんなことじゃないよね?」

「めんな…さ…、ご…め…切らない…で…」

「ジン、違うって………………違うって言ってんだろ?」

また切った。ジンを切った。次は体を切った。深くはない。浅く。胸からお腹にかけて。

「っあ!ううううああ!ああああっああああ、」

「叫ぶ元気があるなら、俺との約束に…うんって言えばよかったのに」

ジンのボロボロになった服を優しく脱がせてあげる。ビリビリ裂いてとりあえず腕に巻いてあげる。そっちは深く切っちゃったみたいだから止血してあげる。流れ続けていた血がましになったからかもしれないが、顔つきがましになったかもしれない。俺はどんなジンでも好きだけどね。

「も……もう……ぁ…ああ…ううぅ…」

「いいなよ…約束するって…俺以外と接さなければいいんだよ。俺だけ見てて。俺のジンでしょ?」

それでもジンはYESと言わない。なぜ?なんで?俺のことが嫌いになっちゃたの?だから冷たかったの?でもどうして俺は嫌われたの?頭の中が疑問符でいっぱいになっていく。これはジンに聞かないと。

「俺のこと嫌いになった?」

聞くと同時に体に走った切り傷の中に指を突っ込んでみる。こうしたらジンが暴れる。喚きながら。これだけ元気だったらまだ手当しなくても大丈夫だよね。ねぇ、叫んでばっかじゃなくて俺の質問に答えて?

「ひっ、あっあああぁ…あ、ああ…きっ…」

言葉を紡ごうとしているみたいだから手を止めてあげた。そうしたらジンはぐったりとして、荒い息を立てながらも俺の問いかけに答えてくれた。ようやくわかったみたい。いつまでもこうしていたら死んじゃうって。最初から俺の言う通りにしてたら傷もつかなかったのに。

「き…ら…いに…なんか…なら…ないよ…」

「本当?じゃあなんで最近、俺以外の人と仲良くするの?ジンは俺と付き合ってるんだよね?」

「…っ……」

「なんでだよ」

「…………っ!…ひ…ろ…とばっ……かり…いる…から…」

「もしかして、妬いてたの?」

そう聞くとジンはコクコクと頷いた。それはもう必死に。なんだ、俺がヒロとばっかり任務してたからジンは妬いてたんだ。だから冷たかったのか。それならそうと言ってくれればよかったのに。もしかしてさっきヒロと話してたのもそういう話をしてたのかもしれないな…。

「それなら言ってよ。俺はジンだけだよ?」

それを最初に言ってくれれば切ったりなんかしなかったのに。ああ可哀想。こんなになって。大丈夫。俺が絶対手当してあげるよ。

「バンく…す…き…」

「俺も好きだよ…さ、こんなところにいないで医務室に行こう?」

「う…ん…ありが…と…」

ほら、もうジンは俺のものだよ。一生はなさない。



fin.

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