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□俺の方が好きなの
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「バンくん」

「どうしたの?」

「一緒に寝ないか?」

「いいよ!こっちおいで」

みんなが就寝して、俺もそろそろ寝るかなという時にジンが話しかけてきた。一緒に寝るなんて今までなかったから俺も嬉しくて、掛け布団を持ち上げた。ジンは嬉しそうに枕を持って俺の布団に入ってきた。

「バンくんの匂いがする」

「え、うそ、くさい?」

「いや、僕は好きだ」

「へへ、ジンもいい匂い」

ジンの髪に鼻をうずめて囁く。ジンがくすぐったそうに、でも幸せそうに微笑んだ。
そういえば最近ジンとこうやって二人になることって少なかったなぁ。パーティーも離れちゃうし、ジンはユウヤにつきっきりだから…。俺がヒロとランとずっと一緒にいるのも関係してると思うけど。カズとアミが帰ってきて3人でいることもあるから、必然的にジンとの時間が減ってた。寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。

「最近二人になれないな…」

「寂しかった?」

「…どうだろう」

「ちょっと!」

「嘘だよ。寂しかった」

ジンが俺の目を見つめて言った。こうやって見つめるのも久しぶりで、なんだか俺の頭の中ジンと少し違って見えた。でも、真っ赤な目は相変わらず何かに飢えていた。何に飢えているか俺は知ってるけど、あえてそれを自分から与えたりはしない。目を見つめて綺麗だね。とだけ言った。

「日本に帰れるかと思ったのになぁ」

「僕は…帰りたくない」

「え?どうして?」

少し声色が暗くなったから、手を握る。ジンの手はいつも冷たい。血が通ってないんじゃないかと思うくらい白いし、女の子みたいに細い。これであんなにLBXを操るだなんて考えられないや。

「日本に帰ったら…もう君とのつながりが…いや、口実がなくなるだろう?」

「ジ…」

「不謹慎かもしれないけど、僕はこうなってよかったと思ってる。君とのつながりがなくなるくらいなら、僕はこうやって世界のために戦っていたい」

いくら被害がでたって、人が死んだって僕は君といたい。お祖父様の事件があって、そんなことはあってはならないとわかっているけれど、僕はもう君なしじゃ生きられないかもしれない。……それは自分のエゴでしかないのだけれども。そう言い切ってジンはまぶたを伏せてしまった。心の奥深くで葛藤しているのかもしれない。ジンはいつも溜め込む。そうやって今みたいに、俺にだけ、我慢できなくなった時に言う。俺とつながっていたいと。

「大丈夫。日本に帰っても一緒にバトルしたり、遊びに行ったり、そうだ、次のアルテミスは二人で出ようよ」

「バン…くん…」

「俺たちはずっと一緒だよ。不安なら…カナダにでも行って結婚する?」

ジンが目を開けてこちらを見たから、冗談だよ。そう言って微笑えんだ。ジンが何に飢えてるか俺は知ってる。それは人に与えられる愛だ。ジンは俺に依存している。それはもう離れられないくらいに。高貴で、気高い薔薇の花のような海道ジンが。このままもっと深くまで溺れてもらおうか。そんな考えが頭に漂い始めてまたジンの髪に鼻をうずめる。
もう君なしじゃ生きられないかもしれない。そうだよ。ジンはもう俺なしじゃ生きられない。かもしれないって言ってるけど、本当は自分でもわかっているんだろう?

「好きだよ…」

「僕もすき」

俺はジンが大好きだ。俺もジンに依存してる。こうやって、焦らして、不安にさせて、優越感に浸っている。最低だと自分でも思うけど、何故かやめられない。

「ねぇ…もう寝よう」

「……そうだ…ね」

「明日もきっとしんどいんだから」

「ああ」

俺はあえてジンに背中を向けた。ジンの顔なんて容易に想像できる。抱きたいと思ったこともあったけど最近はまともに触れ合うこともしていない。

「おやすみ」

ジンが寝息を立て始めた頃、そっと額にキスをした。これは日々の日課。これだけが俺の愛情の印。ジンは気づいているかな。きっとジンが俺に注いでる愛憎からしたら割に合わないかもしれないけど、俺は充分愛してる。

「おやすみ、ジン」





fin.

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