短編
□謎の捜索願
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ある日のホール――。
アンジュ「ふぅ。困ったね……。」
コハク「そうだね……。」
草緑「妙な事もあるもんだな……。」
ホールに居たのは、文字通り、困った表情をしている、アンジュとコハク。草緑は不可解な表情をしている。
シング「あれ、三人ともどうしたの?何かあった?」
ソロ「何だか困ってる様だけど。」
そんな3人に声をかけたのは、ちょうどホールに来たシングとソロ。
コハク「あ、シング、ソロ。実はさっき、差出人の名前がない依頼が届いたの。」
大抵の依頼人は、個人の確認のため、名前を書くのが普通だ。しかし、極稀にそれが記載されていない依頼も届くことがある。
シング「名前がない依頼?よっぽど急いでて、書き忘れちゃったのかな?」
シングは顎に手を当てて首を傾げながら言う。
ソロ「え?そんなこともあるの?」
ソロは草緑に尋ねる。
草緑「こういう依頼は、僕でも初めて見たよ。だが、シングの言うとおりかもしれんな。」
草緑も、このケースに遭遇するのは初めてだったらしい。
アンジュ「そうだね。何せ…
誘拐事件の被害者と犯人を、捕まえて欲しいって内容の様だから。」
ソロ、シング「誘拐!?」
ソロとシングは同時にそう叫んだ。
コハク「まだ、そうと決まったわけじゃないと思う。大事な妹さんを探して欲しいって、そういう依頼みたい。ただ……この字……。」
コハクが二人を落ち着けるためにそう言う。その後、手紙を何か見覚えがあるとでもいうように見ていた。
シング「コハク?」
ソロ「どうかした?」
不思議に思った二人はコハクに尋ねる。
コハク「う、ううん。何でもないの。」
しかし、コハクははぐらかす。
アンジュ「とにかく、内容が内容だし、一応、依頼は登録しておくけれど、目的地は明記されていても、肝心の妹さんや、依頼人の名前が無いんじゃ……。」
アンジュはそう言って困るような表情をする。すると、シングが叫んだ。
シング「アンジュ。その依頼、オレが行くよ。」
ソロ、コハク、アンジュ「!」
草緑「ほう…。」
シングの言葉に三人が驚く中、草緑は感心するように笑う。
シング「いつもジイちゃんに『人が困ってたらなるべく助けろ』って言われてるからね。」
シングは、指を立てて説明するように言う。
アンジュ「そうね……。」
ソロ「僕も、行っていいかな?」
シングに感化されたのか、ソロも立候補する。
アンジュ「そうね。カダイフ砂漠なら、あなたも行ったことがある場所だと思うし。」
というより、カダイフ砂漠への依頼に、ソロは結構な数で行った事がある。
草緑「こういう場合は、土地勘のある人間は一人でも多い方がいいしな。カダイフ砂漠じゃなきゃ、僕が行ってもよかったんだが……。」
そう言った草緑の表情はとても暗かった。
アンジュ「そこは仕方ないでしょ?」
草緑「そうなんだよなぁ……。」
火山や砂漠などの、暑い気候が苦手な草緑は、依頼を断念。
シング「じゃ、ガンドコ行こう!ソロ!」
ソロ「おー!」
コハク「…………。」
シングが張り切って腕を上げ、ソロもそれに続く。しかし、ただ一人依頼書の字を見ていたコハクは、なにか気になる表情だった。
謎の捜索願