短編

□謎の捜索願
1ページ/4ページ

ある日のホール――。

アンジュ「ふぅ。困ったね……。」

コハク「そうだね……。」

草緑「妙な事もあるもんだな……。」

ホールに居たのは、文字通り、困った表情をしている、アンジュとコハク。草緑は不可解な表情をしている。

シング「あれ、三人ともどうしたの?何かあった?」

ソロ「何だか困ってる様だけど。」

そんな3人に声をかけたのは、ちょうどホールに来たシングとソロ。

コハク「あ、シング、ソロ。実はさっき、差出人の名前がない依頼が届いたの。」

大抵の依頼人は、個人の確認のため、名前を書くのが普通だ。しかし、極稀にそれが記載されていない依頼も届くことがある。

シング「名前がない依頼?よっぽど急いでて、書き忘れちゃったのかな?」

シングは顎に手を当てて首を傾げながら言う。

ソロ「え?そんなこともあるの?」

ソロは草緑に尋ねる。

草緑「こういう依頼は、僕でも初めて見たよ。だが、シングの言うとおりかもしれんな。」

草緑も、このケースに遭遇するのは初めてだったらしい。

アンジュ「そうだね。何せ…



誘拐事件の被害者と犯人を、捕まえて欲しいって内容の様だから。」

ソロ、シング「誘拐!?」

ソロとシングは同時にそう叫んだ。

コハク「まだ、そうと決まったわけじゃないと思う。大事な妹さんを探して欲しいって、そういう依頼みたい。ただ……この字……。」

コハクが二人を落ち着けるためにそう言う。その後、手紙を何か見覚えがあるとでもいうように見ていた。

シング「コハク?」

ソロ「どうかした?」

不思議に思った二人はコハクに尋ねる。

コハク「う、ううん。何でもないの。」

しかし、コハクははぐらかす。

アンジュ「とにかく、内容が内容だし、一応、依頼は登録しておくけれど、目的地は明記されていても、肝心の妹さんや、依頼人の名前が無いんじゃ……。」

アンジュはそう言って困るような表情をする。すると、シングが叫んだ。

シング「アンジュ。その依頼、オレが行くよ。」

ソロ、コハク、アンジュ「!」

草緑「ほう…。」

シングの言葉に三人が驚く中、草緑は感心するように笑う。

シング「いつもジイちゃんに『人が困ってたらなるべく助けろ』って言われてるからね。」

シングは、指を立てて説明するように言う。

アンジュ「そうね……。」

ソロ「僕も、行っていいかな?」

シングに感化されたのか、ソロも立候補する。

アンジュ「そうね。カダイフ砂漠なら、あなたも行ったことがある場所だと思うし。」

というより、カダイフ砂漠への依頼に、ソロは結構な数で行った事がある。

草緑「こういう場合は、土地勘のある人間は一人でも多い方がいいしな。カダイフ砂漠じゃなきゃ、僕が行ってもよかったんだが……。」

そう言った草緑の表情はとても暗かった。

アンジュ「そこは仕方ないでしょ?」

草緑「そうなんだよなぁ……。」

火山や砂漠などの、暑い気候が苦手な草緑は、依頼を断念。

シング「じゃ、ガンドコ行こう!ソロ!」

ソロ「おー!」

コハク「…………。」

シングが張り切って腕を上げ、ソロもそれに続く。しかし、ただ一人依頼書の字を見ていたコハクは、なにか気になる表情だった。










謎の捜索願
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ