短編

□賢王の遊説
3ページ/4ページ

ソロ「へ〜〜。こんなんなってたんだ。」

本来なら扉が閉まっていけなかったところから向こうが、ソロにとっては初めてだった。

ソロ「あれ?あの人は…?」

ソロが目にしたのは、一つの空洞の奥にいる、水色がかった白銀の髪に深い青の瞳をした褐色肌の男性。

「…!見つかってしまったか…。」

ソロ「はい……?」

「すまないが、まだ城に戻るわけにはいかないのだ。少しでも見聞を広め、国へ還元できるものを得なければ。それが今の私に出来る、一番の務めだと思っている。父上にそう伝えてくれたまえ。」

ソロ「……?」

そう言いながら男性は左腕をソロに向けて振る。すると、手から眩い光が出た。

ソロ「っ…!?…あれ……?」

ソロが気付いた時には、男性は目の前からいなくなっていた。

ソロ「いつの間に…。今のが、ウッドロウって人なのかな…?」






ソロはさらに奥に進み、ユージーン達が行っていたリングスポットと言う場所。先ほどの男性はそこに立っていた。

ソロ「あの…。」

「っ!また君か…。言ったはずだ。私はまだ、国へ帰るつもりはないと。」

ソロ「いや、そうじゃなくて…。ギルド・アドリビトムの依頼で、ウッドロウと言う人の護衛を…。」

「ギルド……護衛…?」

男性が意外な答えに首を傾げた。

「……どうやら、私は誤解をしていたらしい。すまないが、詳しく話を聞かせてもらえないだろうか。」

ソロは、男性にギルドで聞いたことをそのまま話した。

「なるほどな…、そういう事だったのか…。」

男性は納得したように頷く。

「これは、一時の猶予を与えられたと受け取って構わないのかもしれないな。……。」

ソロ「あ、あの…?」

「…失礼。私ばかりが納得してしまったな。」

ソロ「あ、いえ…。という事は…あなたがウッドロウさんですね?」

ウッドロウ「ああ…。その通りだ…。」

ソロの読み通り、男性は依頼対象、ウッドロウであった。

ウッドロウ「しかし、どうしたものか…私は一応、身分を隠し、各地を遊説している身でな。
公式に、ギルドの今回の申し出を受けることはできないのだよ。それでは、身分を隠している意味が無くなってしまうからね。」

ソロ「そうですか…う〜〜ん…どうしようか…?」

ウッドロウ「……一つ、私に考えがあるのだが…。」

ソロ「はい?」

ウッドロウ「どうだろう?私が、そのギルドに身を寄せると言うのは。」

ソロ「え…?身を寄せるって…アドリビトムに!?」

ウッドロウ「表面上はどうあれ、腕に覚えのある者たちと寝食を共にするのだ。国の者達も少しは安心出来よう。
何より、ギルドには民からの生の声が多く寄せられるはず。私自身も、大いに学ばせてもらう事が出来そうだ。悪い案ではないと思うのだが。」

ソロ「……。僕だけが聞いてもちょっと…。」

まだ記憶が完全に戻っていないソロは、理解するのに難しい話だった。

ウッドロウ「…そうだな。一度ギルドへと向かい、代表者と話をするのが筋だろう。改めて紹介させてもらおう。私は『ウッドロウ・ケルヴィン』。君の名前は?」

ソロ「僕は、ソロと言います。」

ウッドロウ「…そうか。ソロ君と言うのだね。では、改めて案内、よろしく頼む。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ