短編
□賢王の遊説
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ソロ「へ〜〜。こんなんなってたんだ。」
本来なら扉が閉まっていけなかったところから向こうが、ソロにとっては初めてだった。
ソロ「あれ?あの人は…?」
ソロが目にしたのは、一つの空洞の奥にいる、水色がかった白銀の髪に深い青の瞳をした褐色肌の男性。
「…!見つかってしまったか…。」
ソロ「はい……?」
「すまないが、まだ城に戻るわけにはいかないのだ。少しでも見聞を広め、国へ還元できるものを得なければ。それが今の私に出来る、一番の務めだと思っている。父上にそう伝えてくれたまえ。」
ソロ「……?」
そう言いながら男性は左腕をソロに向けて振る。すると、手から眩い光が出た。
ソロ「っ…!?…あれ……?」
ソロが気付いた時には、男性は目の前からいなくなっていた。
ソロ「いつの間に…。今のが、ウッドロウって人なのかな…?」
ソロはさらに奥に進み、ユージーン達が行っていたリングスポットと言う場所。先ほどの男性はそこに立っていた。
ソロ「あの…。」
「っ!また君か…。言ったはずだ。私はまだ、国へ帰るつもりはないと。」
ソロ「いや、そうじゃなくて…。ギルド・アドリビトムの依頼で、ウッドロウと言う人の護衛を…。」
「ギルド……護衛…?」
男性が意外な答えに首を傾げた。
「……どうやら、私は誤解をしていたらしい。すまないが、詳しく話を聞かせてもらえないだろうか。」
ソロは、男性にギルドで聞いたことをそのまま話した。
「なるほどな…、そういう事だったのか…。」
男性は納得したように頷く。
「これは、一時の猶予を与えられたと受け取って構わないのかもしれないな。……。」
ソロ「あ、あの…?」
「…失礼。私ばかりが納得してしまったな。」
ソロ「あ、いえ…。という事は…あなたがウッドロウさんですね?」
ウッドロウ「ああ…。その通りだ…。」
ソロの読み通り、男性は依頼対象、ウッドロウであった。
ウッドロウ「しかし、どうしたものか…私は一応、身分を隠し、各地を遊説している身でな。
公式に、ギルドの今回の申し出を受けることはできないのだよ。それでは、身分を隠している意味が無くなってしまうからね。」
ソロ「そうですか…う〜〜ん…どうしようか…?」
ウッドロウ「……一つ、私に考えがあるのだが…。」
ソロ「はい?」
ウッドロウ「どうだろう?私が、そのギルドに身を寄せると言うのは。」
ソロ「え…?身を寄せるって…アドリビトムに!?」
ウッドロウ「表面上はどうあれ、腕に覚えのある者たちと寝食を共にするのだ。国の者達も少しは安心出来よう。
何より、ギルドには民からの生の声が多く寄せられるはず。私自身も、大いに学ばせてもらう事が出来そうだ。悪い案ではないと思うのだが。」
ソロ「……。僕だけが聞いてもちょっと…。」
まだ記憶が完全に戻っていないソロは、理解するのに難しい話だった。
ウッドロウ「…そうだな。一度ギルドへと向かい、代表者と話をするのが筋だろう。改めて紹介させてもらおう。私は『ウッドロウ・ケルヴィン』。君の名前は?」
ソロ「僕は、ソロと言います。」
ウッドロウ「…そうか。ソロ君と言うのだね。では、改めて案内、よろしく頼む。」