小説(短)

□白い人
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初めて見たのは面接の帰り道。

自分が歩いている歩道の道路を挟んだ向こう側、老人を背負って歩く真っ白な若い男。
男は老人に心配するように話しかけ老人が大丈夫と答えると安心したようにふわりと優しい笑みを見せた。


その笑みに心臓が止まった。


どれくらい見ていたんだろうか、気づいたら男は遠くを歩いていて
道路を横切った車でハッ現実にもどされて足早にその場を離れた。






もう会えないだろうと思ったが
再開はあっさりと叶った。入社式、新入社員が集まる場所で一際目立つ白い人がいた。

「あの人すごい髪の色だね」

「抜いてるのかな?綺麗な銀髪」

「あれ睫も眉毛も白いから地毛か?」

ヒソヒソとその髪の色に驚き話す声。
当の本人は椅子に座りすやすやと寝ている、よくこの状況で眠れるものだ。
普通は緊張で眠れないと思うんだが、そんなこと関係ないというようにスースーと寝息を立てている。
その白い人を見ているうちに式が始まり白い人はそれにハッと気づき寝むそうな目をこすりながら顔をあげた。

かわいいなおい。

男が可愛いと思う自分に若干引きつつ、その白い男から目が離せない。
その男の真後ろの席に座った自分は話を聞いているふりをしてずっとそのふわふわしてそうな髪の毛を見ていた。そのさわり心地の良さそうな髪の毛を触りたい。
なんて思う自分が我ながら気持ち悪い。ずっと見てるなんてストーカーじゃあるまいし、どこか調子でも悪いんだろうか。
その日は一日中その男のことでぐるぐるし、全く話なんて頭に入らなかった。


これからすれ違うたびにこんな風になるのか…


少々の不安を感じつつ帰路につきその日は終わった。
仕事が始まり配属された部は営業部。
普段から目つきが悪いと言われる俺を営業部に配置するなんて馬鹿だろう。しかし営業部には幼馴染で先輩の近藤さんがいたはずだ。
それに関してはよかったと思う。営業部にはあの男はおらず少しがっかりした反面安心していた、いたら居たで全く仕事が手に着かなくなりそうだ。

それにしてもあいつはどこに配属されたんだろうか。

また会えるといい。
そう思いながらすれ違ったりエレベーターで一緒になったりそんなことばかりで話すこともないまま二年。
人事移動であの男がきた、事前に知らされていた名前、坂田銀時と書いてあるだけで全く気がつかなかった。
とことんこの男のことを知らなかったな、と思いながら坂田に挨拶をしておく。

愛想笑いだろうが微笑んだ顔が可愛い、あぁそんな顔しないでくれ…!

ニヤケそうになる口を噛み締めてなんとか無表情を保つ。
近くで見ると肌が白く目が鮮やかな赤色をしていてうさぎのような配色だ。やはり生まれつき色素が極端に薄いのか。
髪を撫でたい、肌に触りたい。そんな願望がぐるぐると頭の中をまわる。俺はエロ親父かよ。
これからこの願望をどう押さえようか先の事を考えて頭がいたくなって自然に眉間にシワを寄せてしまう。
それに気づいた坂田が少し首を傾げ不可解そうに此方を見つめた。

「トシはいつもこんな顔だからきにせんでいいぞ!」

お前も笑えとバンバン背中を叩かれる。
力が強すぎて少し痛い。
さあ仕事仕事!と周りにいた奴らを散らばらせ仕事を再開する、自分の横のデスクに座る坂田が動く度気になってしまう。
中学生かよ、と自分に呆れつつなんとか仕事に集中して乗り切った。しかし乗り切ったと思ったのも束の間
歓迎会と称した飲み会が待っていた。
パッと浮かんだ想像。
酒が入る→酔う→抑えが利かなくなる
それはまずい、非常にまずい、所詮男なんて理性とれば獣ですよ。
好きな相手になら尚更。
どうしようかと考えてるうちに引っ張られいつの間にか飲み屋にいて既にビールを手にしていた。
乾杯というかけ声のすぐあとビールを流し込む。
ふと坂田の方を見ると沖田に絡まれていた。坂田の頬はアルコールのせいだろうか若干赤く色づいている。
じっとみていたせいか沖田が此方に気がつきニヤニヤとなにか企んで居るような笑みを浮かべた。
くそ、なに考えてやがる。
沖田が企む事は大抵よからぬことだ、そしてその80%が俺への嫌がらせ。
またなにか仕掛けてくるに違いない。

「土方飲まないの?」

ふへへ、と赤い頬をほころばせた坂田。

不意をつかれた、その顔にビールをこぼしそうになるもなんとか耐えた。さっきより赤くなった頬と若干潤んだ目。
もうすでに出来上がっているんだろう。
しかしまだビール3杯ほどしか飲んでないのに元々酒に弱いんだろうか。

「お前、酒弱いんじゃねーの?」

「全然!もっとのれます!」

全然ろれつが回ってない。
坂田はその後自分から飲むし飲まされるしで最後はもうフラッフラ。
もう意識もハッキリしてないだろうほっといたらこのまま道端で眠りそうだ。
他の奴らももう酔いが回ってまともに話せないしまともに取り合わない方がいいだろう。

「土方さん」

「なんだ総悟」

「俺はかえりまさぁ」

「あぁ」

沖田が座敷から出て行く寸前にあ、と思い出したように声を漏らし此方を振り返った。

「手の早過ぎる男は嫌われますよ」

「ぶふぉっ」

じゃ、と片手を上げてニヤニヤと気味悪い笑みを浮かべながら出て行く沖田のほうを振り返る。
気づいてやがったのか…!

「総悟てめっ」

「大丈夫ですよ、土方さんがフられたら爆笑してあげやす」

まぁ頑張ってくだせぇと言って去っていった。
残ったのは酔っ払いのみ、二件目に行こうとか話してるしこのまま帰るか…。
もうすでにスヤスヤと寝ている坂田の肩を揺すり起こす。
しかし全く起きる気配もない、ていうか可愛い。
このままほっとくのもまずいだろうし、家はどこかも起きなければ聞けない。
幸い俺の家はここから近いし家に連れてかえって寝させて明日帰せば問題ないだろう。
手の早い男がどうのこうの言われた手前だが手を出さなければ問題ない。
決断は早い方がいい。うん、

「じゃあお先に」

坂田を担ぎ上げそくささとその場を後にした。
金はどうせ会社から支給された金だろうし問題ない、坂田を拾ったタクシーに押し込みそのまま家へと直行。
料金を支払いタクシーを降りる。
暖かくなり始めた季節だが夜はまだ風邪が冷たく肌寒い。足早に部屋へと入り坂田をソファへと寝かす。

「…スーツのままじゃシワがよるか…」

体格は大体同じ位だし、ジャージに着替えさせた方がいいか。
しかし寝られたままじゃ着替えさせられないのでもう一回声をかける。

「おい坂田」

「んー?…ひじかた?」

「ほら、着替えろ」

わかってるのかわかってないのかジャージを受け取りプツン、プツンとシャツのボタンを外し着替えはじめた。
何だかこのままじっと見ていてはいけない気がして坂田から目をそらす。
カチャカチャとベルトを外す音がしたあと乾いた布のこすれる音が耳に入る。
もうそろそろか、と坂田に視線を戻す、しかしまだズボンにてこずっているようで。
ソファに腰掛けながらズボンと格闘していた。

「あとは上げるだけだろ」

「うー…やって銀さんねむ…」

ちらりと此方を見上げた目。
俺の理性を試しているんだろうかいや、まて、耐えろ。
会って一日目で手を出すなんて早過ぎるだろう、というかコイツだって男だし女の方が好きだろうし
ただ一方的にこっちが好意を持っているだけだろう。
だから耐えろ、たえ…

「ふふ、ひじかたへんなかお」

またふわりと笑った顔にやられた。
もういいや、明日は休みだし総悟になに言われてもいいか。
さよなら理性、

「坂田」

「んー?…んん、」

無防備なその唇を奪う。
抵抗もない。
舌を絡めて引けば追いかけて自分から噛みつく坂田に止められなくなる。
どれくらいそうしていただろうか、やっと離れた頃には坂田の顎まで唾液が伝っていて息も途切れ途切れで肩を大きく上下させている。 
抵抗なしの坂田を担ぎ上げでベッドへ下ろし履きかけのズボンを脱がす。
抵抗はしないものの今から何をされるのか、何をされているのかもわかっていないだろう。

その日はそのまま無防備な坂田を頂いたわけで。

さぁ、起きたらなんと言おう…

まだ寝ている坂田の髪を指に絡めてみる。
ずっと触りたいと思っていた白い髪は思いのほかサラサラとしていて毛が細くふわふわしていた。
ずっと憧れていた白い人、やっと触れられた。



あとはどうにか心を奪うだけ。

















 

×××

あれ、なんか土方気持ち悪(ry
リーマンに萌えて書き始めたんですが、それにしても土方気持ち悪い。
銀ちゃん視点のバージョンも書きたいと思います。

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