03/06の日記

17:29
空回りの愛情
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金造は、昔から愛情表現が空回りすることが多々あった。
5つ下の弟を、本人なりに可愛がってはいるものの報われない。
弟が寝るときには、自他共に認める美声で子守唄を歌う。
暇を持て余しているときには、一緒に遊んでやる。
泣いているときには、気をそらそうとかまいたおす。
そう。
それら全てが空回っていたなどと思うわけもなく、本当の善意だったのだ。
歌を歌いだすと、どうしても気分が高揚してしまい、おおよそ子守唄とは思えないほどの音量で歌っていた。
遊ぶときは、何事にも手を抜かない金造だ。
5つ離れている廉造を相手に本気を出し、負けたことなんてなかったし、わざと負けようなど思うわけもない。
泣いているときは、なかなか笑顔を見せない廉造に苛立ち、ついつい八つ当たりをしてしまうことが多々あった。
それでも、本人は泣く廉造を前に笑ってほしい一心だった。
尊敬する兄のように、大好きなたった一人の弟のために、金造は自己流の愛情表現をし続けた。
そうして約十五年。
変わらぬ愛情を注ぎ続けたが、成功したことはあるかと言われれば否だ。
空回りに空回りを重ね、もはやただのいじめと言っても過言ではない表現方法にまで達していた。
廉造を見つければ嬉しくて、逸る気持ちを抑えられずについつい飛び蹴りを。
一人で本を読んでいれば、こちらを見てほしくて本を奪い取る。
寝ていれば羽交い締めにして一緒に眠る。
その際、暑かったらいつのまにか蹴って追い出し、寒かったらぎゅうぎゅうに抱きしめて布団に入っていたわけだ。
廉造の意思など関係なしにやりたいようにやる。
それが、金造なりの最大の愛情表現だった。
たとえ毎度毎度蹴れば怒られ、喧嘩になり兄に怒られようともやめる気はさらさらない。
廉造がへらへらと薄っぺらい笑顔を自分の前では剥がし、様々な表情を見せてくれることが嬉しかったからだ。
柔造の前では甘えてばかりの廉造も、金造の前だけでは違う顔を見せてくれる。
とくべつ、自分だけの特別。
廉造の素を見れることで、空回りの愛情はちゃんと伝わってると思えるから。





廉造の怒った顔なんて見たことないやろ、明陀のアホども。
お前らが奪った廉造の素顔やで。
お前らが殺した廉造の心やで。






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当初の目的は何処へやら
本当は空回りしてても廉造は金造に甘えてるんだよ、的な話が書きたかったのですが…

金造は明陀が好きなのか嫌いなのか…

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