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□1600hit 凛華様へ
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最近、兄がおかしい。
目の前に座る柔兄は、仕事中にため息をついていたり、鳴らない携帯電話を見つめながらぶつぶつとなにか真言のようなことを呟いていたりする。
周りの人からは怖い、不気味だ、などと言われているが、それらは禁断症状なのだ。
この春から、末の弟が祓魔師になるために、聖十字学園に通うことになり、あちらにある学生寮に入った。
つまり、末弟―――廉造が家にいないのだ。
廉造を溺愛していた柔兄のことだ、1ヶ月も会えていないせいで禁断症状がでてしまったのだろう。
初めて症状が出たのは、廉造が小学生のころの臨海学校。
三泊四日だったが、そのときですら禁断症状は出ていた。
それが、今回は1ヶ月だ。
そして、向こう三年は会えないのだから、柔兄はいつか暴走するだろう。
そろそろ祓魔塾に乗り込むのではないかとお父も言っていた。

「そやし、聖十字行ってくるわ」

そんなことを思い出していた矢先に、携帯電話を握りしめ、柔兄が立ち上がる。
そして、ふっきれた顔をして柔兄がそんなことを言った。
さすが、お父。
息子たちのことをよくわかっている。
いや、そうじゃなくて、今なんて言った?

「え?ちょっ!?柔兄!?」
「明日は休みやさかい、泊まってくるわ」

柔兄スマイルで言い放ち、さっさと部屋を出ていってしまった。
しばらく唐突すぎる出来事に放心していたが、慌てて柔兄を追いかける。
抜け駆けなんて、いくら柔兄でも許さない。
部屋着から着替えて、適当に荷物を詰め、錫杖と三味線を持ち、祓魔塾へと繋がる鍵を使う。
お父へは後で電話をしておけば平気だろう…多分。
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