JOGIO

□KING of KING
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―カシャッ


「いい加減にしないと叩くぞ」
露伴は子供を叱りつける大人の真似をした。しかし叩くとは掌でピシャン、とするものだ。エマが見上げた腕の先には、握られた拳がある。殴るの間違いじゃないのか。
何をそんなに怒るのだろうか。フィルムが入っていないカメラすら拒否する露伴。一緒に写真を撮った経験がない者なら誰でも不満だ。
「その代わりに撮ろ?」
レンズから覗く彼は、やっぱり怒っている。目尻を吊り上げる程に嫌なのか。
「ボクが写真嫌いなの知ってるだろう」
あっ、今度は呆れた表情をした。
―カシャッ
思わずシャッターを切っていたエマ。とうとうカメラを取り上げられてしまった。
「勿体無い、露伴いい男なのに」
うわ言の様に言葉を漂わせると、腕を組んでソファに座った露伴。爪先が不規則にリズムを踏んでいる。機嫌を損ねた今、必死に宥める意味はなかった。
「静止した『過去』に何を求めるんだ。未来でもない、現在こそ!全てなんだよエマ」
もしかして露伴はジンクス的なものを信じているのか。写真によって立ち止まる自分を恐れている、きっと。踏み留まる、簡単に出来ないソレを露伴は必死に……。
「なら私の事、撮って」
「……嫌だね」
キミの写真をボクの部屋に飾られたら、たまったもんじゃあないからな。と背凭れにふんぞり反った。
「そうね、写真見て夜中に寂しくなって呼び出されたら、たまったもんじゃないわね」
薄ら笑いを浮かべたエマは、してやったりと楽しんだ。露伴は何て言い返してくるのか、それなのに。
何を黙っているの?ポップコーンみたく罵り言葉が飛び出す露伴と違って、酷く大人しい。エマは露伴の膝に手を置いたが、弾かれた。一瞬合った視線も、あから様にスイと反らされる。
「ほんとエマはボクを傷付ける才能だけは、長けてるよ!」
まるで被害者の主張だ。
「あんなの冗談に決まってるじゃない」
エマは露伴の髪を撫ぜつけ、サラサラと指を通した。徐々に頭が傾いてエマの肩へ遠慮がちに重なった。

「今日は泊まっていけ」
傷心のボクを放って帰るなんて、許さない…蕩けた口調は、瞼が落ちる合図。

KING of KINGな彼模様

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