JOGIO

□虹を跨ぐ世界
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ボクは何故ここに居るのか。
正午過ぎの暖かい陽射しが窓から降り注ぐ寝室。ベッドに踞り寝ていたらしい。どうして?ハッキリしない頭でドアノブに力を入れて、漸く思い出せた。そうだ、今朝バカみたいな喧嘩を仗助とやらかしたんだ。施錠の掛かった扉を隔ててボクは、彼を拒絶した。
些細な…いや、くだらない事で。朝食のトーストに仗助は苺ジャムを塗り付けて渡してくれた。当たり前に、気を使った行為を露伴はあから様に腹を立てた。トーストにバターをたっぷり塗ったのが食べたい、そんな日をブチ壊された怒りを容赦なく仗助に向けていたのだ。
「ボクも大概…イカれてるな」
きっと仗助は呆れて帰った筈。一度、臍を曲げたら意地でも直さない性格は既に熟知しているのだから。それでも、ゆっくりロックを外して扉を開いた。シンと静まり返った家は、予想通りでもある。露伴は小さく溜息を付いて廊下に足を踏み出した。
「―ん!?」
廊下にトレイが置かれていたのを見付けた。透明のラップが張られた下にトーストがある。よく見れば、たっぷりバターが染みて美味しそうな香りが僅かに漂う。仗助だ。変に几帳面な彼が新しく用意してくれたのだろう。でも寝室に入れてくれないから置いたらしい。露伴はトレイを持ち上げ、玄関へ進んだ。分かっていたが仗助の靴は無い。
握り締めたトレイ、上手くいかない互いの距離感。ボクに年上の自覚が無いのが原因なのだ。露伴は壁に背をついて、ズリズリと座り込んだ。ラップの上からトーストを突けば、すっかり固くなっている。
取り出して角に噛みついた。
―ガチャン、
いきなり玄関が明るく照らされ、露伴は目を細める。見上げた人物は確かに仗助だった。驚いて口や目を大袈裟に開けている。
「へ?ろは…あ!何食ってんスか、」
次にポカンとしたのは露伴だった。
「ボクのじゃあないのか…?」
「そうだけど、固くなったの食べなくてもよォ〜」
仗助は顰めっ面で口を尖らせた。何より帰って無かった事に露伴の耳が朱に染まる。誤魔化す様にトーストを口に詰め込んで、悪かったよ仗助…と呟いた。
「何で謝んの?俺が悪いんスよ、ごめんな露伴、」
玄関の段差に膝を付き、仗助は情けない顔で露伴を覗き込んだ。指先が頬を滑り、詰め込んで口内を突き上げるトーストを辿る。リスって、こんな感じ?とヘラリ笑う年下の男。親指の腹が唇の端をなぞった。パンクズ付けて、と宥める視線は年下のソレと違った。
「じょーすけ」
「なんスか?」
「明日は苺がいい、」

end―――――――――

あくまで露仗だと言う 笑
ヘタレ露伴でした。

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