JOGIO

□A Lover's Concerto
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何時かこの緑なす場所に戻ろうと約束したね。
さよさよ降り続く雨の中をわたし達は、寄り添い二人歩く。
あの時と何ら変わらず、高い梢の小鳥達は花に夜の調べを奏でている。

「見てごらん?また、戻ってきたね」




わたしは君を抱き締めて

もう一度「るいてし愛」と言う...









A Lover's Concerto~






静かな雨は、しめやかに草原を覆う。
丘の向こうには輝く虹が掛かっているね。
そんな全てが恋に落ちる。
わたし達の為にあるんだよ、エマ...

「ずっと貴方と居るわ」

「君は本当に愛らしい人だな」

吉良は艶やかに熟れた赤へ唇を寄せた。瑞々しく光を反射し、触れる感覚をも滑り落としそうな赤が溢れる。
肌寒い濃紺に薄ら浮かんだ生っ白い膚。体温の少ないエマは、それでも暖かくわたしの膚を包み込んでくれる。

そうっと君が愛してくれれば、わたしも全てをエマにあげよう。だのに君って人は、嗚呼ホントウに悲しそうに訴えてくるのか。何が不安で、何が君を締め付け苦しめる。

「長く寂しい愛の夜に涙を流すのは嫌。だから嘘は付かないで?」

その事をずっと覚えておいてね。
と、華奢な掌がわたしをいっぱいに包んで離そうとしない。この愛に溺れたいと滲む。だから優しく優しく握り返した。壊さぬ様、傷付けぬ様。

「何も泣く事はないだろう、約束したじゃあないか?この場所でわたしは君を抱き締めて"るいてし愛"と誓うと...」

誰にも邪魔はさせない。ほらご覧、此処には、わたしと君、エマだけが清らかに息づいている。



***




流れる様な旋律が何時までも耳を心地好く撫ぜては去る。
吉良吉影はエマを見上げ、奇っ怪に微笑みかけていた。垂れ落つる柔な前髪が私の腕を掠めて擽る。男は悠々と彼女の膝へ寝転びながら、飽きもせず頬擦りを繰り返していた。
時折、甘く噛んでは舌の上で転がす指先の赤は執拗な攻め立てで既に剥げてしまった。
無意識に指を引き抜こうとすれば、チロンと覗いて蠢く舌。まるで獲物を誘っているが如く、エマに甘い痺れを覚えさせ疼かせる。
男の咥内は媚薬を塗りたくったモノかもしれない。又は、唾液と一緒に分泌されているのかも知れん。

私を果てなく愛でている。そんな緩みきった脳味噌は思考がズルズルに溶けきっているらしい。それでも気味の悪さにどっぷり溺れてしまうなんて...
男と女
常識と非常識
吉良吉影と私...

この距離は盲目的で図れないだろう。


そして先から吉良と同じく撫ぜ廻している、聞き覚えのある旋律がエマに降り注いでいる。

「ねえ、これ何て曲なの?」

「A Lover's Concerto」

「ラヴァーズ・コンチェルト...?」

「雨の中で確かめた愛、再び同じ場所で愛を誓う。そんな詞だ」

「再び?素敵ね」

何度も何度も繰り返される旋律。
この時間が終わってしまわぬ様に、さよさよ降り続く雨音に紛れる。
瞼を落とせば二人の世界は美しい歌声に乗せた詞が広がる。

「またこの場所へ、わたしと君、二人戻って来よう」

胸に抱き寄せた愛おしい存在。
酷く心苦しい、君はとても魅力的だ。ぺらぺらと煩く騒ぎ立てないのは非常にわたし好みである。しかしこの美しさは、単品でなければ何等価値がないのだ。
不意に合った視線に孕む彼女への激情が時期を知らせた。ようやっと君はわたしを受け入れる為の器を差し出す。


「必ずよ、」

「ああ、エマ"愛している"」


ゆうたり。
吉良吉影に重なって現れた影が残像の様に触れてしまえば、今か今かと待ちわびる。
キラークイーンの能力が発動すると、己の身に起こった非情な出来事を刹那に感ずるエマ。そして全てを理解する、吉良吉影と云う男の開いたパンドラの箱を。
まぁ君が生きていればの話だ、既に事切れ散った後では学べないだろうに。

この瞬間が堪らなく、ヰタ・セクスアリス。


わたしは君を抱き締めて

もう一度「るいてし愛」と言う...



それにしても指に食い込んでいるじゃあないか。サイズの合っていない指輪で鬱血痕が残りやしないか、ずっと冷や冷やしていたよ。

「この指輪は捨ててしまおうね?エマ」





A Lover' Concerto~
それは恋人たちの協奏曲...
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