Lollipop


□Let's パーティー
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悪辣非道で冷酷で外道。託された命に感謝せず自らの肉体から魂をえぐり出し悪魔と契約を交わした貴方。傷付く事を望み受け入れるしか出来ない不器用で可哀相な人。闇の中は悪魔と魔人が乱痴気騒ぎ…血に飢え血で潤し肉に飢え肉で満たす。冷徹な仮面の下は飽きる事なくどんちゃん騒ぎを繰り広げる。

そんな貴方だから足場の悪い脆く崩れ落ちる寸前の斜塔の上でグラリ、グラリと愉しみながら命と死の天秤をお遊びに変える。歪みきった正義はもはや修正不能の暴走マシーン、誰よりも早くスピードに狂う。





カリ…カリッ…ギリッ…コキン

しん、と静まり返る色を持たない部屋に不気味に響く、えぐる様な引っ掻く様なゾクリと身震いさせる音。外出から帰りマンションのエレベータが部屋のある14階で点滅し開いた。ジャケットからカードキーを取り出し向かうは自室、目線より少し高い位置にカードを差し込みドアノブを廻して異変。ひやりと冷たいノブにヌルリとした感覚は紙一重の悪魔が訪問を告げている目印。触れてしまったのは仕方がないそのままドアを開けば薄暗い空間に不気味な気配と異臭。


部屋に入り赤い手を庇いながらパチパチと明かりを射してゆく指。開け放たれたリビングの扉を覗けばより鮮明に聞こえる音、より刺激が強くなる臭。視界には見慣れた背中が床に座り込み上半身をユラユラと前後に揺らしクツクツと笑っていた、彼は今ご機嫌らしい。


『クザン?ただいま』

『んぅ?あぁ、おかえりぃ』

『何だか、ご機嫌みたいね』

『最高にな。分かち合いたいよ』

鼻にかかる甘ったれ口調。近付き前に回り込むと酒瓶でタワーが作られていた。律儀にラベルは前を向いていて危なっかしく積まれているのは空の角瓶や丸瓶と様々だがやたら度数の高い銘柄ばかり。それを眺めながら持っていた酒を未だ喉に流し込んでいる。不気味に聞こえた音は爪を噛む音。冷めない興奮を酒で紛らわし小さな余韻を爪を噛む事にぶつけるのだ。


『悪いんだけど、まずシャワーね?』

『りょーかい』

どす黒く色付いている白いスーツや身体、得に頭から腰まで血を被ったように染まっていた。酒のせいか血のせいか充血している目は痛々しくもあり光を取り入れていない。覚束ない足でフラフラと立ち上がり浴室に向かって行く彼を追う、酒を持ちながらシャワーを浴びる異常すら今は判断出来ないのだろう。


『それは貸して』

『へぇ、意地悪だな』

『ちゃんと流してきてね?』

言い聞かせてバスルームに押し込んだ。軽く着替えを済ませ様子を見に浴室の扉を開けば、服のままシャワーを頭から被り排水溝に吸い込まれていく他人の赤を指差してニヤついている。奇行以外にないクザンの行動に目を背けたくなるが見捨てるなんて選択は微塵も無かった。普段の彼は紳士すぎる男性であり頼りになるのだ、只たまに起きる発作的衝動で生温い血を浴び生きている実感を感じたくなる…それだけだ。

『シャワーの意味あるかしら?それ』

『見ろよ。綺麗に流れていきなさる』

可笑しい。とクスクス喉を鳴らし頭を掻きむしったクザンは濡れて張り付く服をタイルに放り投げた。それを確認してからリビングで待つ間に血生臭い部屋の窓を開放し甘いミルクティで気持ちを落ち着かせる。


潜り込んだベッドの中で私を痛い程に抱きしめてイヤらしく腰を擦り付け熱い吐息を吐き出しながら、まだ終わらないらしい。と…悪魔と魔人の乱痴気パーティーは一度スイッチが入ると精神を肉体を限界まで追い詰めエクスタシィを与えつづけるのだ。甘い甘い麻薬、崩壊され狂いのたうち廻り最高の子守唄の断末を彼に聞かせる。

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