Lollipop


□バスタブMagic
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それは
甘い肉体の機械仕掛け

それを
甘い音色でネジを巻く

そして
甘い魔法が解け錆付く






『エマ、フヤけちまうぞ』

バスタブで泡を掬っては潰す、そんな独り遊びを小一時間と繰り返していれば呆れたように浴室の扉を開かれた。むせ返る蒸気、むせ返る香り。それが一気に一箇所から逃げて薄く散ってゆく刹那。


『もう逆上せんじゃねェか?』

『まだ出たくないの…』

この幻想的な空間から今は出れない、捕われて囚われて一分一秒でも長く深く浸っていたい。エマは困った子だな仕方ない。とバスタブの横にしゃがんで私のファンタジーな世界を掻き乱そうとする腕が囚われの深海にスルリと入れられた。


『放っとけばこれだ、なぁ?』

そんな事を漏らしながら蛇口を大きく捻られた。勢いに押され飛び散る泡、水力に押し出されてく泡、フワリと生まれ変わる泡。これはコレで刺激的、鈍っていた五感が一気に覚醒する…麻痺。

『熱すぎだ、お馬鹿さん』

『だって気持ちいいのよ、凄く』

何度目の忠告だろうか、エマの為に紡ぐ言葉は栓を抜いた水槽の如く、聞き流がされてゆく。呆気なく簡単に、それでも繰り返し言い聞かせる自身は、滑稽に見えて仕方ないだろう。弾力を取り戻した泡を掬い、エマの剥き出しの淡く色づく華奢な肩に滑らせて…

循環と逆流


『早く出てきな、頼むから』

『どうしたの?そんな甘えた声出して』

凄い貴重な体験しちゃった。と最高な笑顔で笑われた。

『オジサンが言っ――嗚呼、時間だ』

嗚呼、時間だ。お道化ながらクザンの真似をするエマは開いた口から真っ赤な果実をチラつかせている。

『いってらっしゃい』

煽り立てるような物言いは、小悪魔か。

『すぐ帰れるとは思うけど、エマは一人でも大丈夫か?』

『何も問題ないわ』

泡を指でツンツンと戯れるのを止めない。

『とりあえず風呂は終わり、行く前に上がんなさい』

手を差し出し幻想的な世界に迷い込んでいた君を取り戻す。そのままスルリと離れゆく身体。思い通りにならない自分だけの赤い世界に投げ付けられたのは、純粋無垢な何色にも染まる溶け崩れた、マシュマロ3つ。

『甘く官能的じゃない』

横から伸ばした腕が捕えたのは君の腰、腕に吸い付き香り放つ…甘い肉体の機械仕掛け。長い髪をかき上げ、賑やかに飾られた耳に噛み付き熱い吐息を一つ…甘い音色でネジを巻く。柔らかな唇を愛おしみ、指に押し付け引っ掻けば…甘い魔法が解け錆付く。

クザンが帰る頃には、すっかり錆付いて
身動きすら窮屈で、ただただ甘い蜜を貪欲に求め解けた甘い魔法を求める。


艶めかしいエマはマリオネット

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