Lollipop


□悪酔いバニラ
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女って生き物はやたらと派手に着飾るのが好きでそれを褒めれば喜び、女心がわかる男の称号を勝手に与えてくれるもんだ。別に迷惑だと思わないが笑っちまう。




『しかし甘ったるい』

嫌味で言った言葉じゃないがつい零してしまった独り言にもエマは気にする様子は見せない。寧ろ嬉しそうな笑みを浮かべ煙草の灰を灰皿に落とした。

『自分に酔わねェか?』
『変な事聞くのね』
『確かに…俺が酔ってんのかぁ?』

彼女が動く度に甘ったるい馨が俺の鼻に纏わり付く。馬鹿みたいに振り撒いた香水ではないのにバニラに混ざるスパイス。エマから違う馨がした事はあったか…否だ。嫌いじゃない、不快でもない、少し好まないだけの俺。

『クザンは爽やかな馨ね』
『まぁ、嫌いだろうなエマは』
『嫌いよ』
『バッサリ切り捨てんなァ…いつも』

分かっていたが意外にもダメージは大きく俺をえぐった。そんな性格も含めてエマを夢中で追い掛けてる哀れな男に救いの手は差し出されないままか…

『甘ったるいイメージないだろ』
『むさ苦しいかも…』
『それ言っちゃいけねェよ?マジ』
『クザンの中は甘ったるそう』

おいおい、年甲斐もなく受け流す事すら忘れたじゃないか。白濁の渦が波打つ感覚はダイレクトに神経を震わせた。

『骨の髄まで甘いから抱かせなさい』
『酔ったみたいね』
『エマにクラクラしてる』

熱く見つめても効果がないなんて男として情けないでしょ、まさか俺って色気が足りないのかもしれないと過ぎる。ただ盛り狂ってるだけの獣では無いと声を大にして宣言させてもらいたい。

『違うわ、バニラの馨によ』
『確かめれば早い』
『抱かれろって?クザンに』
『俺の指、可愛がってみなさい』

テーブルに頬杖をつきながら艶めく唇に人差し指を押し付けた。無反応なエマは煙草を灰皿で揉み消し指を掴み離してしまった。

『夢中になるのが怖いか?』
『夢中にさせそうで怖いわ』
『いっちょ前に煽るね』

出し惜しみする舌がチロリと爪先をなぞれば盛った熱が高ぶる。なかなか次の刺激を与えてくれないエマがクスクスと笑っているのが気に入らず舐められた指を自分の舌で撫ぜつけた。

『焦れったいのは好きじゃない』

言い聞かせれば大人しく奥まで含んでザラつく舌が包み込んできた。付け根を執着に攻められ快感に鳥肌が立つ。奥歯を強く押すと力が抜け吐息が漏れるエマは最高に欲情する。

『気持ちいい、うん。堪まんない』
『やっぱりクザンは甘い』
『だろ?』
『ねぇ…』
『抱いて欲しいか?』

引き抜いた指を見せ付ける様に舐めあげ咥えればエマは物欲しげな視線を向けてきた。

『酔っちゃったみたい』
『エマのお口は素直じゃないね』
『…好き』
『あら、先越されたな』

エマのバニラが俺を狂わせる。嗅ぎ慣れないそれは何時しか求めて狂わせる欲に擦り変わっていた。移り香すら貪りたくなる程に。


嫌味を言われても嬉しそうに笑ったエマの表情が頭を通り抜けた。悪酔いしていたのは只の勘違いだったのか…

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