Lollipop


□取り扱い注意【S級】
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「お姉ちゃん気ィ強いだろ?」
「えっ!私ですか」
「ベッドでは甘えん坊?泣き虫?」
「―ッ!」
「本気で泣いてくれたら最高だなァ」



真っ昼間から不謹慎な煩悩男が吸い込まれるように近付いたのはオープンカフェ。お茶をしながら読書をする美人を引かせる口説きでヘラヘラと笑っているのを見掛けてしまった私。呆れるよりも変に感心しているクザンの変態ぶりと身の軽さの行く末を見届けようと近くのベンチに座り煙草を咥えて観察を始めてみた。


「あらら、泣くならベッドにしない?」

クザンは困り果て泣き出した女性をさも楽しげに攻め立てている。青キジだからと周囲の誰も止めない事が私を苛立せ、煙草を踏み潰しながら暴走している図体に向かった。

「ここで泣くのは勿体ない」
「ド変態」
「ありゃ…エマちゃん」
「恥ずかしい人」


私の登場に何故か嬉しそうなクザンは口説いてた女性に軽くごめんね。と手にキスを落とし私の前にしゃがみ込んだ。道の真ん中での奇行に人々の視線が刺さるのも構わず表情を崩さない男は図太いと改めて思う。

「知ってるだろエマも。俺は変態だから泣き顔で燃えるって。本気で嫌がって泣かれるとマジ堪んないの」

「なに晒してんの…自分の性癖」

「誰でも隠してんだよ、一つや二つ」

惜しみなく己の醜態を市民に暴露したクザンは気怠い顔で私の腰に巻き付いて鼻をスンスン鳴らしている。

「クザン離して」
「エマ見捨てないでよ」
「ねぇ、ホントやめて」
「苦しがるエマの頭ベッドに押し付けないから…後ろから無理に髪も引っ張らない…嫌がるエマの顔に愛液も出さない…」

普段より張り上げた声でくそ真面目に懺悔されたが余りにも場違いで目眩がした。胸元でクザンはやっぱり飄々と私を見ている。

「変態な俺だけど見捨てないで」
「―ばか!」
「控える、まぁ…ほどほどに」
「何がよ」
「ここで言わせる気?」

今更なにを躊躇する必要があるのだ。舌のよく回るオープンスケベに目もくれず周囲は私を凝視する。クザンが言った事を当て嵌めているのか手で口を押さえている。

「私に執着する意味が分からない!」
「抜群だからでしょエマとの相性が」
「チャラこましてるくせに」
「これは美人に対するマナーよ」


腕を振り解き平手をするも微動だにしない男は叩かれた頬をポリポリと掻いていた。業とらしく痛みを訴えたがすぐに開き直る。



「その顔を泣かせるのが堪らんのよ」



嗚呼、敵わない。

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