Lollipop


□ベニエの恋
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「なぁエマ、そんな上品にしてたら正しい食べ方とは言えないんじゃないか?」




ベニエの恋





クザンのリクエストで四角いドーナツに粉砂糖を振りかけたベニエを、エマは小さく噛んでいた。クザンは一口で放り込み、指に纏わりつく粉砂糖をペロと舐めている。

「だってクザン笑うでしょ」

「まさか」

「嘘!厭よ、いや」

クザンの前で口の周りを汚しながら食べるなんて、そんなの恋人がすると思っているの?口の端を吊り上げて今か今かと待っている男の視線が痛かった。

「大丈夫、君なら何でも可愛い」

嗚呼、何て狡いのか。ふんわりと目を細めながら微笑むクザンに私は弱い。身体中の熱が沸騰でもしたのか、掴んでいるベニエの粉砂糖がジワリ、溶け始めた。
仕方無くエマは大きく開いた口にベニエを詰める。柔らかな生地に鼻の先まで埋まって案の定、酷い有り様になった。

「ほら、だから厭なの」

「クッ!クククッ」

「ひっ…酷い!最低よ!」

自分から言っといて、この男は腹を抱えて笑っている。苦し気に呼吸を繰り返し、私を見て、また笑う。

「違うッ、あんまり可愛いからさ、」

よく見せてよ。と顔を寄せてきたクザンは鼻をスンと鳴らして、舌で粉砂糖を舐め取った。ザラリとした甘ったるさが エマの中に入り込み、互の舌で擦り合ううちに熱く咽喉を通りすぎた。
クザンは溶け落ちた唾液すら愛おしみ、吸い上げる。





それはベニエがもたらした恋だった
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