海軍・海賊
□正義の休戦
1ページ/1ページ
私ってこんなに雑な性格だったのかと落ち込みそうな荒れ方をしている部屋。ダイニングテーブルに積み上がる葉巻ケースと灰皿を眺めて苦笑いが出た。べーグルサンドをかじりながら物置にされているソファーの隅に腰掛けるが視界が賑やかすぎて頭が疲れる。折れ曲がり皺が付いた書類の束からカラー用紙が飛び出しているのが見えた。海賊の手配書だと分かり暇潰しにと引き抜いて見比べてみると意外と幼い男の子達が写っていた。
『名無しさん海賊に興味あんのか?』
『可愛い男の子ばっかりね』
『遊びじゃねェんだぞ、返せ』
さっきまで偉そうに腕組みしてソファーに踏ん反り返って寝てたくせに。手配書を奪いダストボックスに捨てたスモーカーが睨み付けてきた。いつでも不機嫌な男の相手は苦労するものだ。
『寝る』
人の膝にクッションを置き頭を乗せて来たスモーカーは寝やすい体勢を探して頭や肩を下で動かしている。落ち着く場所を見つけ腰に巻き付いてきた腕の力は強い。
『髪のびたね』
『触んな』
『柔らかい。切っちゃうの?』
『うるせェぞ名無しさん、寝かせろ』
欝陶しそうに手を払いのけられた。嫌なら寄って来なければいいのに…なんて言ったら本当に怒ってベッドに行かれてしまうだろう。
『暇なんだけど』
『ボケっとして暇じゃねェだろ』
『失礼ねスモーカーは』
『見んな、気が散る』
お腹に顔を埋めてしまったスモーカーは甘えん坊のくせに捻くれている猫みたいで可愛かった。持て余した手で頭を優しく撫でていると温い寝息が服越しに伝わってきた。それでも巻き付く力は強くて緩むことがない、気を許しているが油断はしていない染み付いた正義。
『ん…名無しさん』
『ここに居るよ』
寝ぼけながら顔を上げたスモーカーと目が合えば何故か私の方が安心していた。この不器用で天の邪鬼な男が精一杯の勇気を出し弱さを見せてくれる事に。