海軍・海賊


□チョコミント
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程好い甘さの後に爽やかな刺激を主張する
そんな曖昧な君を苦手とする人は意外と多い
けど私は好きよ。特にチョコミントアイスが…



◇チョコミント






嫌味な程にラッピングされた細長い箱を握り締める。彼は受け取ってくれるだろうか、心配で不安で昨日は寝付きが悪かった事を思い出した。すれ違う海兵達は私の手元を見てはニヤリと口を吊り上げる。我らが上司の誕生日を把握している証拠だろう。

彼の仕事部屋へ近付けば速まる鼓動が騒ぎ立てる。落ち着くようプレゼントのリボンを撫ぜ付けるとピッタリ目的地で足が止まった。細心の注意を払い扉を2回ノックして一歩下がる、少しの間があり苛立った声で入室の許可が出た。

「…名無しさんか、どした」
「おめでとうございます、腑に落ちませんが」
「あ?なんだ一体」
「受け取ってください」
「お前なんの真似だ」

一気に彼の不快指数が上昇してゆく様が感じられた。握っていたペンを放り投げ葉巻の灰を乱暴に叩き落とす。細めた目元は煙が纏わり付き泪を促すというのに瞬きを許していない。恐ろしいまでの視線と威圧的な空気に私は挟まれた。奥歯を噛み締め男の横まで歩み寄り、机に箱を滑らせたが睨み付ける視線は未だ私を捕らえている。

「スモーカーさん、が…嫌い」
「なら持って来る意味が理解出来ないが」
「一応、お祝いしたく来ました」
「はッ!嫌味かよ」
「まぁ、そうなりますね」

漸く私から机に目をやる彼は箱を指で弾くと持ち上げた。ピンクの包装紙にハートのプリントが並んでいる皮肉に気付いているのか分からないが、意外と丁寧に紙を剥がしてゆく指。そこまでを見届け踵を返し扉に手を掛けた。

「残念だな名無しさん」
「―ッ何がでしょう?」
「チョコミント、嫌いじゃねェ」

笑いを含む言葉を背に受け、キツく目を閉じた。

「私の無礼も少しは報われましたね」
「思ってもねェ事を」
「ふふ、やっぱりお嫌いです」

さっき隙間ほど開いた扉がゆっくり閉まる。真後ろに葉巻と少し甘ったるい香水が漂う腕が伸びていた。ゾクリと粟立つ身体に甲高い警報を鳴らす脳内、危険と回避を刹那に繰り返している。

「名無しさん」
「お好きだとは迂闊でした」
「お前も食うか?」
「ご冗談を…結構です」
「そうかよ、なら行け」


好きか嫌いか苦手か。
人それぞれ好みは違うチョコミントの存在価値。きっと私は決めつけていた、君は少数派なのだと。私は好き、だから彼は嫌いだと決めつけた。私が彼を嫌いなように。
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