海軍・海賊


□ライティ・ライト!?
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それは只の気紛れ…
店先に積み上がる林檎が魅力的で買い取った。
丁度よく掌に馴染む、何処か愛玩の様な愛しさ。


◇ライティ・ライト?


数ヶ月前に持ち帰った時を思い出そうとした。
この林檎は一体どんな色をしていた?
どんな形で大きさで甘い蜜を撒き散らしていた?

もはや腐敗を通り越し、成れの果てを食い止める様に腐乱している。つんざく不快な異臭。膿を広げる果汁は果肉を脅かしトロトロに崩してしまった。

何故だ…何故、誰も目を背け見ようとしない。己の欲を満たす機能を果たせない迄に行き着いたからか、それとも美しくないとでも言いたいのか。俺にはお前が今でも魅力的で仕様がないのに。





「触るな、バカヤロウ」

「捨てろ、バカヤロウ」

まるでオウム返しをする女は土足で禁断の領域に踏み込んだ。名無しさんは床に座り突然、林檎に指を突き刺す。僅な力で醜い姿に豹変した時、俺はゾッとした。無意識に心臓がある胸を掻き毟って渦巻く感情をやり過ごそうと必死になる。それだけでは落ち着かない…足早に靴を鳴らし、名無しさんの側まで近付く。

「ルッチ、この林檎…図々しく泣いてる」
「何を勘違いしてるんだ」
「勘違いはロブ・ルッチの方」
「くだらん戯れ言はよせ」
「忠告してるの」
「断る」
「分かろうとしないルッチに天罰を」



グズグズとかき回す名無しさんは段々と浸食を進めている。体内の分泌液が逆流して喉を震わせた。唇から血の気が引いてゆき力が入らない。やめてくれ。言葉が突っ掛えり、すがるのは焦点の合わない視線のみだった。

「グチャグチャに無くなるのよ?」
「ッあ、」
「まさか何か通じるの?無様だわ」
「名無しさん…ッ」
「ならルッチは此れ食べれるよね?」

向けられた指。張り付く肉片、滴る涙を悲しいと女は訴える。直接的な刺激に迷いこんだ思考。容赦なく名無しさんは俺の口に滑らせた。

「もっと早く気付かなきゃ」


ルッチは踞り内臓が引っ張られ全て吐き出した。
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