姉弟

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…あれからなんとかあたしの看病のお陰もあり、弟は風邪がすっかり治ってこの通りピンピンと、

「姉さん!」

抱き付いてくることが多くなった。

「どいて、」

じゃなくて元気になった。

「えー」

「えーじゃない」

でも、あの風邪以来スキンシップやベタベタすることが多くなった。
ほんと、ただ笑って後ろをついて回ってきた幼少期が恋しいよ!!…まだ幼少期じゃ?とか言わない!

「ねぇ?あたしなんかしたっけ?」

「風邪の時ずっと傍にいてくれた!」

「あ、そう…」

「!、待ってよ!」

嬉しそうに笑う弟にあたしは忙しいので立ち去る。


「姉さん、姉さん!」

立ちふさがる障害物を避けて庭に出る。


「待ってよ!姉、さん?」

庭に出れば彼の目の前には誰もいない。

確かに出て行ったハズなのに…と何度も周りを見渡す弟。

「…姉さん、」

困惑している彼を見下ろして、あたしは笑いをかみ殺していた。

あたしは今、木に登って枝に腰掛けている。

此処からは見渡せるが向こうは意外とあたしがいることに気付かない。

ふわっと風が吹き、とても気持ちが良かったが、何やら下が騒がしくなった。

…見れば弟は男の子に囲まれていた。


「姉さん、姉さん、」

…あれは弟の物まねか?

「あははは。止めろって」

…失礼だがあたしも吹き出してしまった。

「何か言ってみろよ、シスコン!」

「だからアリスに嫌われてるんだよ!」

ビクッと弟の体が揺れる。


あたしからは弟の頭しか見えない…

でも、これだけは分かった。


「…―――さい、」

「あ?」

「煩いっ!」

…怒っている。


「うわ!!」

遊具が勝手に動き出し窓がガタガタと揺れ、ついには割れてしまった。


逃げ出した男の子たちに一人になってしまった弟は何故か近くにあったあたしのいる木にもたれかかる。


「姉さん…ぐずっ」

「何よ」

バッと顔を上げるが誰もいない…

「姉、さん?」

「だから、何?」

先程よりもイライラとした声音で弟はようやく見上げる。

濡れた赤色と乾いた空色の瞳が交わる。

「ほら、上がっておいで…」

周りに誰もいないことを確認し弟を木の上に上げ、あたしと向かい合う所に座らせた。


「………」

何も言わない弟にあたしは、ため息をついて割れた窓を見て驚いている大人や子どもを見る。

…そんなあたしに何を思ったのか、

「姉さんは、僕が嫌い?それとも怖い?」

チラリと見ればこちらを見てくる赤い瞳は真剣だった。

「両方…」

「え!」

目を見開き、驚愕から絶望に変わる表情にあたしは訂正する。

「嘘よ!嘘!」

途端に安堵を浮かべた弟に思わず笑みがこぼれた。あたしのことであんなに一喜一憂するなんて、

「あんたのことは…――嫌いじゃないし、怖くもない…
もしそうだったらあたしだけのこの場所に上がらせないね」

「姉さん!」

ピョンとあたしのいる枝に乗り移って抱き締めてくる弟…こんな所で抵抗すれば、落ちてしまう。

ミシ…と嫌な音が聞こえたが、あたしはため息をついて弟に質問する。

「ねぇ、あんたはあたしのこと嫌い?」

いつもいつも拒絶するのに懲りずに弟はこうやって絡んでくる。

嫌がらせに近い感覚だ。
体を放した弟は笑顔で答えた。

「そんなわけないじゃないか!大好きだよ姉さん!」

あまりにも予想通りの答え過ぎて思わず苦笑した。


一体何故そんなに好きなのかと質問したかったが木はそれを許してくれず、自らの枝を折ってあたし達を地に落とした。











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