姉弟

□14
2ページ/2ページ



「お主の瞳には何も映っとらん。」

キラキラとあたしとは違う輝く青い瞳が見定めるようにあたしの暗い蒼い瞳を覗き込む。

「喜びも、悲しみも、怒りも、希望も…――絶望さえも、じゃ。」

………

「…――確か、弟以外の人とは関わらないそうじゃの…」

「……だから?弟でさえあんまり関わってないけど?」

…何、いきなり精神科らしいこと言って、

気付けば自然と眉を寄せていた。

「お主は周りから傷付けられることを恐れておる…故に周りを避け、孤立した…」

「…――んたに、」

うるさい、

「感情というものは何かが起こって感じる心じゃ…何もないのなら何も感じん…故に何も求めん…」

うるさいうるさい、

「…―――かんのよっ、」


「まっさらで何もとらわれず、なのに周りの心を動かす…まるで…――雪のようじゃの…―――」

うるさいっ!

「、あんたにっ、何が分かんのよっ!!!」


「……アリスの事はアリスしか分からん。じゃが…」

顔を真っ赤にしたあたしにあのジジイは鋭い目で見たかと思うと、


…―――「パンドラの函はいつか開かれる…」

茶目っ気たっぷりに笑った。

「…姉、さん?」

乱暴にベットに入り込んだあたしに弟は目をこすって体を起こす。

「…――うる、さい」

…初めて、

「!、姉さん…――泣いてるの?」

…生まれてきて初めて、弟以外に怒鳴ってしまった。
しかも意図的に怒鳴らされた…
あたしはそんなつもり、なかったのに…


…あたしはいつも無関心、無関係を貫いてきた…今さっきまでは…


抱き締めてくる弟にあたしは窓の外の雪を見た。



白、白、白…――


白一色…―――


そんな世界を見つめていたあたしは無性に何かにすがりつきたくなった。

といっても悲しいわけじゃない、辛いわけでもない…苦しい、わけもない…―――

不意にそう感じただけだった
なのに、

…何も感じないあたしは何かを感じようとしているのだと、気付かされてしまった。


止むことなく降りてくる氷の結晶は今じゃああのジジイの所為であたしを苛々とさせる材料となった。




…――「羅雪……ラセツが良い。」

「…――羅刹じゃなくて?」

「……雪が、振ってるじゃないか。だから、羅雪」



…でも、

無性にすがりつきたい気持ちは何故か変わらなかった…
それが、余計にあたしを苛立たせた。









翌日すぐにMs.コールに昨日訪ねてきた爺のことを聞きにいった。
すると彼女は呆れたようにこう言った。

「そんな人とは会ってません。夢でも見ていたのですか?」と。



.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ