姉弟

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いつかの暑い日にエイミーベンソンとデニスビショップを姉さんから遠ざけた。

…それは姉さんと僕の二人だけの世界にしようと思ったからだ。

…なのに、

「アリス!何、本ばっかり読んでんだよ!」

「……、返してビリー。」


「嫌だね!返して欲しけりゃ奪ってみな!」


「………」

姉さんに絡んでいるのはビリースタッブス…

そしてその空間に入り込めないでいるのは弟の僕、

…何でこう、うまくいかないんだ。

「!?お前っ!」


「はい、姉さん」

「ありがとう」

睨み付けてくる視線を無視して奪った本を姉さんに返せば感情のこもってない返事が返ってきた。…別にいつものことだから不満なんかない。


「っっっっ!」

…彼は不満だらけみたいだけど

「っ、無視すんなよ!」

「ビリースタッブス…姉さんがお前なんかを相手になんてするわけないだろ?」

嘲笑する僕にビリースタッブスの顔が怒りで更に赤くなる。

そうだ、
このまま、暴れまわって姉さんに嫌われてしまえばいい!

「…ビリー、相手にしたらだめ」

「っ!」

「姉さん!」

姉さんは分かっていない、そのひねくれ者はっ、


「姉さん!!」

本を片手に持った姉さんは颯爽と呆けた彼を引っ張って僕から離れていった。




「あの子に関わらない方がいいわ。あたしにも、ね」

どこか個室の部屋に連れてきたあたしはビリーに向かってそう言ってやった。

「…何でだよ、」

「分かってるでしょう?あの子がおかしくて、あたしはその姉だから、」

あたしの場合は単純に関わらないで欲しいから、なんだけど…弟を出汁にしても良いでしょ?別に

きっと弟は拗ねるだけだから、

「…嫌だ。アイツはおかしくても、お前はおかしくない!」

……おかしくない、か



「…あたしは、本当はおかしいの。弟よりも、おかしい…いちゃいけない存在…」

前世の記憶を持つ者なんて、おかしくないのかな…

「そんなこと、ない!!」

「!…――」

顔を赤くして怒っている彼にあたしは目を見開いた。

「お前は…おかしくなんかない!いてもいいんだ!」

「ビリー…――――あんたは…やっぱり優しいのね、」

「な!!」

顔がまだまだ赤くなる彼にあたしは生まれて初めて弟以外に笑った。

「あんた…確か兎を飼ってるんだってね…やっぱり、優しい」



彼はとうとう怒りを耐えきれなくなったのか、先に部屋を出て行ってしまった。

その後に続いて出れば丁度弟に目撃された。
弟は顔をトマトのように赤くした彼を見ると衝撃を受けたように一歩後退り、あたしを見るとすぐさま駆け寄って何をどう考えていたのかこう言った。


「……姉さん!今すぐ、姉弟で結婚できる国へ行こう!」


真剣な弟にあたしはひどく脱力した。












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