姉弟

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数日後、

ビリースタッブスの兎が死んだ。

首を吊って呆気なく。




ビリーは泣かなかった。…ただ、そこにある現実を、吊り下げられた死体を、動かなくなった肉の塊を、見つめていた。


「…あんたの怒りの沸点がわかんないわ」

良く彼と衝突していて、その時は彼を軽くイジメるだけだったのに…

あたしは最近ハマってしまった[聖騎士物語]から目を放さずに尋ねた。


「それは姉さんに手を出したからだよ」

視線を上げれば、ニコニコと笑っているこの事件の黒幕の弟…


「あ、そう…って!

いや別に手は出されてないから!!」

マセガキ…!

なんて思いながら指摘すれば、弟は途端に機嫌が急降下し眉を寄せた。

「じゃあ、あの薄暗い部屋でアイツとナニしてたの?」

…マセガキなんてレベルじゃない!?

「何って、話してただけ…」


「………………信じられない…」

「…姉さんを信じられない?」

疑うような視線に
姉さん、と魔法の言葉を囁けば、渋々納得してくれた弟…

何この浮気しているような夫と疑っている妻の殺伐とした会話…


「……でも関心しないわねぇ…力を使うなんて、」

「!!、…――――やっぱり、姉さんには何でもお見通しって訳だね。」

「まぁね、」

あたしは再び、読んでいる本へと視線を向けた。

「でも、なんで止めないの?昔は止めてたのに?」

「理由…知りたい?」

コクリと頷く弟にあたしは口角を上げた。


「昔はね、あんたの力のせいであたしまで被害がきそうだったから止めたのよ。」


「でも、最近気付いたの。その力であたしの人除けの出汁になってもらえばいいって、」

「…―――ふっ」

とうとう狂ったのか、弟は腹を抱えて笑い出した。


「ほっんと、姉さんは…――――」

…なんか、馬鹿にされてる…?


「そんな顔しないでよ。…理由を聞いて僕が嫌うと思った?」

「……」

「姉さんが僕を止めた本当の理由は…周りからそして僕自身から僕を傷付けたくなかったから。」

「……止めない理由は?」


「…僕はね、姉さん。姉さんの為にこの力を使ってた。分かってたでしょ?今回が初めてじゃないってこと…」

…弟は時々ガラクタを持ってきた…―――


「…それで?」


「僕の為に使っていた力を姉さんの為に使ったんだ。誰かの為に、なんて傷付かないし止める必要なんてないだろ?」


…どうして弟はこんなにもあたしを綺麗に見てくるのだろう…あたしは、そんなに…

「綺麗だよ、姉さん。」

いつの間にか傍にいた弟はあたしを抱き締めた。

「姉さんは綺麗で、
臆病で、素敵で、残酷で、とっても優しい姉さんだ。」

表情は見えない、でも、きっと年齢にそぐわない笑みを浮かべいるのだろう。

「あぁ、そうだ。お見通しな姉さんでさえ知らなかったこと教えてあげようか?」

至極嬉しそうな声音にあたしは本の文字を追うなんてずっと前に諦めて、ただじっと同じページを見つめていた。

「ビリースタッブスは姉さんのこと好きだった」

「、…――――」


誰かの為、

なんて、

「ほら、やっぱり知らなかった」


きっと危ないってまだ、幼いあたしには気付かなかった…あたしよりも幼いからだろうか、弟は


…―――――その危うさを笑っていた。













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