姉弟

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「どうして!
どうして君は分かってくれないんだ!?全部君の為だ!!」

「うるさい!もうこれ以上関わらないで!」




父親母親を殺した青年は叫んで、懇願するかのように女性に跪いたが女性は青年の手を振り払って、高い高い塔から墜ちた。


そうして彼女は自ら命をたった。



読み終わったあたしは本を閉じ表紙を見た。

“愛を知らぬ”


…題名を見ずにMs.コールの本を取ってきたのは間違いだったわね…


ため息をついてさっきまで読んでいた本を放りあたしはベッドに沈んだ。


…愛を知らぬ、

この本に出て来た青年は小さい頃から誰にも愛されていなかった。いや、想われてすらなかった。
父親は亡き青年の母親を重ね、継母もまた彼に前妻の面影を感じて憎んでいた。
そして貴族だった彼に使える者も、後継者としてしか見ていなかった。


誰一人、彼を見ていなかった。

そんな中、彼を彼として接した人が一人だけいた。
だが、彼に初めて向けられた感情は…あまりにも冷たかった。

それが、あの女性の無感情だった。


青年はどんな感情でも自分を自分として見てくれたことに酷く胸を打たれ、
無感情は何も見ていないのだと気付かなかった。
愛して、ないのだと、知らなかった。


女性は青年が自分を愛してるのだと知っていた。
何故なら容姿に惑わされ近寄ってくる男共となんら変わりなかったからだ。


少女だった頃、彼女は両親を亡くしその後は身売りをして何とか生き抜いた。


…彼女は愛されることはあっても、愛することはなかった。

彼女もまた、愛を知らない。



愛されることを知らない青年と愛することを知らない女性…―――


まるで…―――



「アリス!」

「…―――何ですか、Ms.コール」

「っ。Mrs.コールと呼びなさい!」

「……どうかしたんですか?」


体を起こしてヒステリックな……Ms.コールを見れば彼女はあたしのすぐ側に来ていてあたしの両腕を掴んだ。


「トムを…トムを、何とかしなさい!」


〜しなさいとか〜しなきゃ、とか命令されるのが嫌いな弟に、やはりMs.コールは合わないらしい…


「無理ですよ。…最近あたしを避けてるんですから」

それだけ言ったあたしは腕を振り払いベッドに沈んだ。


「!!、なら話し合うだけでも、?…それは!!」

ようやくベッドに目を向けた彼女は何やら見知った物が目に入ったらしい。


「あなたが盗んだのですか?!」

本を片手に持って引っ張るようにしてあたしの体を無理やり起こしてきたMs.コールをじっと見つめる。


「借りただけ。ちゃんと返すし…」

「そういう問題じゃないでしょ!」


「っ……だって、此処の本はつまらないですから」


「っ!」












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