姉弟

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「…―――お気に入り、だったのに、」

あたしの目の前にあるのは無惨にも切り裂かれたワンピース…

あの事件から数ヶ月、あたしは孤児院のみんなからイジメを受け始めていた。
…こっちにきて初めてのイジメ。
改めて思うけど、イジメって意外とバレない。人数が多い分、それだけ敵が多いし、結束し、強くなる。そして口が固く、嘘も吐く。
…人間関係が乏しいあたしの言い分よりも、数が多い言い訳の方に世間の耳が傾いてしまうのは仕方のないことだった。

それにしても今日一日、いやこれから暫くはグリネジェで過ごさなきゃならない。

「…弟も、…―――」

弟もあたしの知らない裏側でこんなことをされてたのかな…―――

いつも傍にいたあの子が急に霧がかかったように分からなくなった。
あたしの見えない所で、あの子は一体どれだけの痛みを…―――

「姉さん、」

「っ、」

今、いや、あの事件以来一番会いたくなかった人物の声が聞こえ固まってしまう。

「、…―――」

「姉さん!」

ワンピースを拾い立ち去ろうとした瞬間、弟はグイッとあたしの腕を掴み引き留めさせた。

「それは…――」

あたしの手に持っているボロボロのワンピースに弟は冷たい視線をおくる。

「…――この間みたいに、放っておけばいいじゃない、」

掴まれた腕を振り払うように動かすも、弟は更に手に力を込めてキツく指を食い込ませた。

「…――それが、必要なくなったんだよ。」

うっすらと笑みを浮かべる弟は腕を引き、顔と顔とが引っ付きそうなくらい距離を縮めた。

「っ…―――」

すぐ近くにいる弟の表情は笑っている…なのに、彼は不気味なくらい怒っていた。
あたしを写す赤くなった瞳が、そう告げていた。

「ねぇ姉さん。ここ最近、僕のことを避けているだろ?」

「……んなわけないでしょ。避けているのはいつもの…――――」
「嘘だ!」

「っ、」

赤い瞳が鋭くなったと思った瞬間、あたしは背中に強い衝撃を受けて押し倒された。
気が緩んだ隙に、弟はあたしに跨ると両腕を一つにまとめて押さえつける。

「僕は姉さんをいつも見てきたから分かるよ。
今までは悪態を吐きながらも、一緒にいたのに。おかしいよね。あの日以来、全然会ってなかった」

再び笑みを浮かべたまま、手を放した弟。自由になったハズのあたしの腕は何故か動いてくれなかった。

「姉さんは…優しくて残酷だ。」

ひとりごちるように呟き近付いてきた弟の表情は恍惚として両手であたしの頬に触れた。

「まるで僕に隠し事をしてるみたいだね?」

「っ…っ、」

必死に腕を動かそうとするあたしに弟は嘲笑うかのように歪んだ笑みを浮かべていた。

「でも…―――」

「!?」

するすると這うように降りていく手に驚いて固まったあたしの顔を弟は楽しむように見つめていた。

「生憎、僕って姉さんには鋭いんだ」

「な、にして、!?」

ゆっくりとグリネジェに手をかける所でようやく声を上げたあたしに弟は容赦なく、手を服の中に忍ばせてくる。











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