姉弟

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その紅を向けられたとしても平気だと思ってた。
なのに、あたしは息が詰まって呼吸すら許されなず、去って行く弟に手を伸ばすことも出来ず、ただ座り込んでいた。

どれくらいそうしたままだったか分からない。
外の景色を見れば雪が本格的に降り始めていた。

あたしは…どうして、弟にあんなことを言ったのか。
あたしは、何か変わったのだろうか。

立ち上がってぼんやりと外を見ながらそんなことを考えていると、

……あぁ、そう言えばもうすぐあたし達の誕生日だ。


唐突に思い出したあたしは冷めたようにいつかの誕生日と変わらない程吹き荒れている雪をみて、笑った。可笑しかった。

いつもの今頃は彼と二人で寄り添ってたのに、今はこんなにも独りだ。

「……馬鹿だわ…あたし…」

人は独りでしか、生きてゆけない…

そんなの、知ってるのに…

頭を振って馬鹿な思考を止めもう一度窓を見れば、雪が降る向こう側で派手な服を着た見覚えのある初老の男が佇んでいた。


「!、」

あたしは夢中で部屋から飛び出し、外へと向かった。

…その年配に違和感はあった。雪が振っているのに、何故か彼の肩には積もってなかった。

そして何より、笑みを湛えた彼の顔は…、



「久しぶりじゃの…アリス」

「久しぶり、です」

彼が消える前に話したくて走ってきたあたしは荒げている息を戻しながら返事を返す。

「…儂に色々と聞きたいことがあるのじゃろ?…じゃが、自分で知らなければならないこともあるはずじゃ…」

「…自分で…知る?」

「儂は魔法使い。…此処に来たのは、魔法学校…つまりホグワーツで魔法を学ぶ学生を探しに来きた訳でのぅ…」

「……これが君の聞きたいことじゃろ?」

のぞき込まれるように見つめてくるジジイにあたしは思わず体を引いた。

「だが……」

そんなあたしに鋭いブルーの瞳は逃がさんばかりにあたしを射てくる。

「知らなければならないことは、それだけではない。」

「アリス、君は薄々気付いているはずじゃ…メローピー…つまり君たち双子の母親はブロンドの髪の持ち主じゃった…わかるかね?
父親が誰であれ、髪の色が合わんのじゃよ」

「っ………知ってたわよ…それくらい、」

ずっと、ずっと…――


「…ならば、アリス…君の“産まれた理由”を知らねばならん。」

再び生まれた時から…―――知ってた。

「まず、これを飲みなさい…」

「………ん!」

母さんがただ、あたしを抱いていただけで、産んだ訳じゃないってことも…


血が繋がってないことも、分かってた。


それでも…

「さぁ…この懐中時計の針を九回、反時計回りに回しなさい…」

それでも、あたしはあの子の姉でいたいと願った。


あの子が…あたしに“生きる理由”をくれた…

なら、
“産まれた理由”だって…――


あたしは震える手で針を回し終えると、ぼやけてる視界を閉じた。

「姉さんっ!」

「!!、」

ビデオテープを巻き戻すかのように景色が目まぐるしく変わって行く中で最後に見た人物は、見たこともないくらい焦っていた。







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