姉弟

□18.5
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…僕は姉さんが幸せならそれで良かった。

何も話さなくても、遠くから見るだけだとしても、顔を見れるだけで構わなかった。

…だけど、姉さんから避けられていると分かった時は、それは口に出来ない程傷付いた。

「…――この間みたいに、放っておけばいいじゃない、」

始めに僕が避けだしたのは認める。
だって、
そうしないと、


姉さんまで、苛められてしまうと思ったから。
でも、そんな努力は

「…――それが、必要なくなったんだよ。」

…―――無駄だった。

姉さんは苛められている。

嫌な予感が確信へ。
確信から怒りへ。
怒りから悲しみへ。

「…ごめん。姉さんには関係無いね」

「姉さんはきっと、僕のことなんか気にしてないよね」

こんなにも、僕の感情を揺さぶっているのに、姉さんはただまっすぐに僕を見つめていた。

「だからかな。姉さんは僕の気持ちを理解した上で苛められてたことをひた隠してた…――」

……嘘だ。これは姉さんが僕を理解してくれないから吐いた言葉のあや。

今だって、僕の感情を読み取ろうと、ジッと瞳を覗いてくる。


「知ってるでしょ?僕は姉さんのこと、こんなにも想ってる…」

きっと僕の思考を読み取ることが出来ても、僕の感情を読み取ることは出来ない。出来るわけがない。
それでも、伝わるようにと額同士をくっつけた。

「…弟の僕に心配をかけるから黙ってた?
それとも、僕がアイツ等に仕返しをするから黙ってた?」

「どちらでもない」

姉さんの心は手に取るように分かる。

「姉さんは……どうでも良かったんだ」

すべてが、無価値…

「許す許さない以前に。
苛めることも。苛められることも、」

すべてが…―――

「破られたただの布や傷だらけの皮膚も、
何もかもが、姉さんにとってはすべてが無関心だったんだ…――」

大事そうにしてるワンピースも、怪我をした体も、苛めた奴らも、僕も…すべてが無関心…―――

「……どうしたの?何も話さないなんて…――」

「…話すことなんて、ない。」
「…そう」

てっきり、本心を指摘された姉さんが何らかのアクションを起こすと思ってた僕は拍子抜けした。
でも、


「でもね…―――」

離れようとした僕の胸倉を掴まれる。

「姉さんはこうだからって、勝手にあたしの感情を決めないで!
それはアンタが作った幻想で、あたしの感情なんかじゃない!!」

姉さんは、顔を真っ赤にして、まくし立てると部屋から出て行った。


「………やっぱり、姉さんは残酷で優しい姉さんだ…――」

姉さんは気付いていないんだ。無感情な本心を悟られて、焦っていると言うことに。











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