姉弟
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「姉さん!」
すり寄ってきた弟に視線を下に下げた。
「…?。何やってるの?」
不思議そうに手元を覗き込んだ弟にため息をついて答える。
「絵を書いてんの。」
「これ…花だよね?」
…言っておくがあたしは絵が下手ではない。弟が無知なだけ…
「ヒマワリ…って花よ。」
「ヒマワリ…――なんか、太陽みたいだ。姉さんはヒマワリが好き?」
椅子に座ったあたしを見上げてくる弟にあたしは目を丸くするも、すぐに質問の答えを探す。
あたしは…―――あの人が嬉しそうに受け取っていた花の…自分の書いた絵を見つめる。
「好き、かな。
でも、あの人が受け取ってた花はキライ…――」
「僕は気に入ったな。ヒマワリ…」
そう言って弟は黄色い花びらから黒い種と順々にさすっていく。
「何だか、姉さんみたいだ。」
「ぶっ!」
思わず噴き出したあたしに弟は眉をしかめる。
「だって、姉さんは太陽みたいに暖かい…」
どうやら、弟はあたし=あったかい太陽、らしい。
冷たく突き放しているあたしをどうしてそんな風に思うのか、ホント不思議だ。
でも、
その発想でヒマワリだと受け取ってもらえるならば、あたしはそれで良い…
「姉さん、」
何故か泣きそうな声を出す弟に意識を現実へと戻す。
「姉さんはずっと…ずっと太陽みたいに側にいてくれるよね?」
「…んなわけないでしょ。」
弟の懐きっぷりにはいつも驚かされる。
子供のいる夫婦でさえ別れてしまう時があるのに…呆れたようにそう言えば、弟は震えだし今度は怒りの表情を浮かべた。
「っ!うるさいっ!」
色鉛筆が折れそうになってきたのであたしは無視を決め込むことはできず、弟を見下げた。
…怒っているのに、どこか泣き出しそうな表情で…
迷子みたいだった。
「前に言ったでしょ?人は一人で生きてかなきゃいけないって…みんな一緒よ…」
「…―――」
弟は眉を下げて俯いた。
「だから…あたしがいなくなってさ、もし一人になったら…―――ヒマワリを見て思い出して…」
「…――?」
次の瞬間、言葉を続けたあたしに弟は目を見開くもすぐに笑顔になった。
嬉しそうに絵を見つめる弟にあたしは苦笑した。
ヒマワリについて…―――
あの人にヒマワリを送ったアイツと同じようなことを囁いたから…
でも、
苦々しい気持ちを抱えたけれど、
何故か、後悔をしてはいなかった。
『I have been looking at only you』
「あなただけを、見つめています」