姉弟

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姉さんは僕のたった一人の家族だった。

自慢の姉さんだった。


誰にもかかわらず、孤高を貫く姿は気高く美しかった。

しかし、どこか儚く危うい雰囲気にいつしか消えてしまうと…僕は怖れた。



「姉さん、」

「なっ、抱きつくな!」

僕は幼い頃から、ふとした瞬間に言いようのない不安を感じた。

その度に姉さんに触れ安心していた。

何があっても、僕の傍にいる。

姉さんはどんなことをしても僕を否定するようなことを言わなかった。

顔を赤くして怒鳴っても、それは照れているだけだと分かっていた。



あぁ、姉さんは此処にいる。

何処でもない、僕の傍ににいる。

誰が何をしようとも僕の傍から姉さんを奪わせない。
僕が守ればいい。

明らかに傲っていた僕は、気がつかなかった。

「!、姉さん…――泣いてるの?」

珍しく姉さんが泣いている。

今思えば、あの時から始まっていたんだ。

「…あの、ミ、Mrs.コール…」

「!、なんですか?」


「昨日…お医者様が来ませんでしたか?鷲色の髪をした人なんですけど」
「?…昨日だけでなく、ここ最近そんな人は来ていませんよ?夢でも見たのですか?」

「、……そう、ですか」

姉さんは絶対に鷲色の男と会った。
夢なんかじゃない。

僕は姉さんの言うことは本当だと思う。
でも、少しだけ…信じたくなかった。

無関心な姉さんを悩ますほどの奴なんていなかった。

僕は会ったことのない、正確にはいるかもどうか分からない男が酷く妬ましかった。


ただ、恨んでただけだった。








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