姉弟

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いつの頃からか、姉さんは時折、困ったかのような表情で僕を見つめてくるようになった。

しかし姉さんは無自覚なのだろう、一瞬の内にして無表情へと変える。

姉さんのことを姉さんよりも理解してる僕にさえ、その感情を読み取ることは出来なかった。

僕にとって、その変化は苛立たせる一方だった。

その所為で、最近姉さんとはうまく話せていない。
先程も、その怒りをぶつけてしまった。

ふと廊下から外を見れば、雪が降っていてそういえば誕生日が近付いていたなと思う。

なら、尚更早く僕たちの世界から異端分子を取り除かなきゃ…

癖になってしまった言いようのない不安にかられ、焦るように歩き出そうとした瞬間、

「っ…」

廊下を走って行く姉さんに僕は驚いた。

あんなに真剣な表情で走るなんて…嫌な予感がする。

何処に向かって…

「!?」

窓から見えたのは、変な服を着てニコニコと笑っている爺だった。

鷲色の髪に僕はまさかと思いながら走る。

嘘であってくれ…僕の勘違いであってくれ、


切実に願ながら外に飛び出せば、姉さんがうずくまっている。

「姉さんっ!」

「、!!」

張り裂けるくらいに叫んでも、姉さんは答えてくれなかった。

姉さんは僕の目の前で一瞬にして、世界から消えた。

まるで初めから何も無かったかのように周りの時が過ぎていく。

ただ、

ぽっかりと沈んだ雪だけが、そこいたと証明していた。

「う、そだ…」

…姉さんさえ、そばにいれば…。いや、ずっと一緒だ。

そう思っていた慢心な僕にその証明は出来るだろうか。




姉さんは…
僕のたった一人の家族だった。

自慢の姉さんだった。


誰にもかかわらず、孤高を貫く姿は気高く美しかった。

しかし、どこか儚く危うい雰囲気にいつしか消えてしまうと…

僕は怖れた。









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