my diary

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翌日の朝、うっかりそのまま朝まで寝てしまった私はお腹を空かして大広間に来たのだが、

「……車を盗み出すなんて、退校処分になってもあたりまえです」

「ブッ…」

席に付いた瞬間、吼える手紙がすぐ近くにあるのが目に入った。

…吼えられているのは、
顔を真っ赤にして机に突っ伏したウィーズリー、

「くくく、…――?、」


笑いをこらえていれば、唐突にこの手元にある日記に対しての疑問が浮かんできた。

―――そういえばあなたは聴力ってあるの…?―――

「…――お父さんは恥ずかしさのあまり死んでしまうのではと…――」

吼えられている内容に耳を傾けながら何回書いても反応しない日記にそう綴れば、

―――……ある訳ないだろ。からかってるの?それとも馬鹿にしてるの?―――

ようやく反応をした日記はつっけんどんそうに文字を浮かべる。

「……まったく愛想が尽きました。お父さんは…――」

吼えメールの効果か、それともウィーズリーの母親自身の所為か、その声音は広間の全員の鼓膜に響き渡っている。

「…何よ、そんなに、」

―――怒らなくてもいいじゃない―――

―――怒ってない―――

―――ただ、君の悪い癖なのかな…―――


「私達がお前をすぐ家に引っ張って帰ります」
―――酷く情緒不安定で、気に入らない―――


二つの言葉が重なり、私は一瞬固まった。

―――……私が、不安定?―――

そんなの、言われたことない。
私はいつだって冷静に、客観的に、物事を見ているつもりなのに。

そう、だからどうってことのない、日記の戯れ言。しかしどう言う訳か私の胸は苦しく締められ嫌な汗をにじみ出している。


「…あらん?」

軽く鼻にかかった甘い声音に私は日記を閉じた。
「どうしたのかしらん?」

差し出されていた時間割を奪った手元から視線を上げた。
年齢にそぐわないたわわに実った胸に、これまた年齢にそぐわない妖美な笑みを浮かべ、彼女は笑っていた…――

「……何でもない、艶麟(エンリン)。」

狐・艶麟…

彼女も東洋人。私と同じ。でも、艶麟は私とだいぶ違っていた。
彼女の両親は二人とも東洋人で遠い中国からわざわざこのホグワーツに来たそうだ。
そして、
「!、エン、ありがとう!私、困ってたのよね。」

私の分を一枚抜き取り、私を睨んでいる次の子に渡す。

…そう、彼女はスリザリンなのにグリフィンドールの生徒からも慕われている。いや、従わせている、の間違いかもしれない。

彼女はそれ程までに沢山の人々から受け入れられていた。

艶麟は更に笑みを深めて時間割を私に差し出す。

「悩み事があるのなら、妾に相談してねぇん?」
「艶麟ちゃん優しいー!!」

「いやぁん妾照れちゃうわん」

野太い黄色い声援に桃色に染めた頬へ手を当てた艶麟に更に声援の声が大きくなる。

あまり人と関わらない私に彼女はいつもこうやって絡んでくる。そして、なんとも言えない苦労感に襲われるのである!

…今回もまたいつもの通り、何もしてないというのに疲れてしまった私は最初の授業を見て、急いでその場を立ち去った。






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