my diary
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テストなんて、簡単。先生の言ってるところを重点的に勉強すれば容易く点数は取れる。
なのに、なのに、
「…――ナニコレ、」
1 ギルデロイ・ロックハートの好きな色は?
2 ギルデロイ・ロックハートの密かなる大望は?
…ふざけた質問が三ページに渡り延々と綴られている。
「うわぁ…裏までびっしり書いてある…――」
ウィーズリーの漏らした独り言がペンを持とうとする心を挫かせる…
…こんなことなら、日記を置いて来るんじゃなかった。
「……サクラ?もう書き終わったの?」
うつ伏せた私にポッターは心配するように覗き込んでくる。
「えぇ。」
真面目に書き込んでいる奴がいれば、見てみたい。テキトーに書き込んだ私はふて寝とも狸寝入りとも言える眠りについた。
「サクラ、」
自分の手足も見えない真っ黒な世界で、男子生徒がこちらに向かって突っ立っていた。
「サクラ、」
男子生徒の顔立ちは分からないものの、彼はその形の良い唇を歪ませて、笑みを湛えている。
「サクラ、」
私の名前を呼び続ける彼は異様で不気味で…恐ろしかった。
「…いや、」
近付いてくる彼に思わず、遠ざけるように手を前に出す。
「!?」
その時、私は初めて見えた。黒い液体がこびりついてる自分の両手を。
「っっ!」
「、サクラ!」
目を開くと同時にポッターが焦ったように声をかけてきた。
「……」
「サクラ…その、」
体を起こして周りを見渡せば、ちらほらと静かに此方の様子を伺う生徒。
ということはまだテストは続いてるし、数十分しか立っていない。
もう一眠りしようかと思うも、ふと違和感を感じ視線を落とす。
「っ!なん、で…―――」
震える手は確かに目が覚めたという証拠
だが、
黒い液体が付着してあるその手は、明らかに夢の中のそれと被らせていた。
「…ゴメン、驚いたよね…僕が不注意でインクを零しちゃったばっかりに……」
「…………」
「…?サクラ?」
…なんだ、インクか…―――
早く、流さなきゃ…
「サクラ!」
勢い良く立ち上がった私にポッターは止めるように声を発するも、
「…――洗ってくる」
私は振り向かずに急いで教室から出て行った。
「……っ…」
一番近い蛇口のある教室に駆け込む。
「…っ…っ」
黒い液体が、私の体を蝕んでいく。それが、酷く不愉快で嫌悪感が溢れ出す。
「…っ…っ!」
…大丈夫、もう大丈夫。
「…―――っ、はぁ…」
赤くなった手に思わず口角が上がった。
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