短編
□Where am I ?
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「ねぇ…‘私を愛してる’って言ってきた奴がいるんだけど?」
上辺だけの彼氏にそう言ってやったら、
「へ〜……」
此方を見ずに曖昧な返事をした。そんな彼はみんなの前では愛想良く答えるのに、今は怪しい本を広げてひたすら何か書き写している。
「…優等生がそんな本を呼んでていいのかしら?」
話を聞いてない態度に皮肉を込めて言ってやったら、
「…良いんだよ。どうせ君が言ったって誰も信じないからね」
やっと此方を向いた彼は綺麗な笑顔を浮かべていた。
「で、君に愛してるって言った奴にどうすれば良いんだい?嫉妬でもすればいいのかい?」
嘲笑する彼に私は呆れたような表情をし否定を述べると嬉しそうに笑った。
「そうだね。君はウザイから何とかしてくれってタイプだね」
…確かにそう思って上辺だけの関係になったんだけど……
「今回は違うわ…ただね、私やアナタはよく言われるでしょ?」
「まぁね、」
「アナタはどうしてそんなことを言われるか、考えたことない?」
真面目に聞いた質問なのに彼はため息をついて再びペンを動かした。
そんな冷たい彼は成績優秀で容姿端麗だからだろ、と答えた。
「そっか……でも、」
それって私を愛してない。
成績が良かったら誰でも良い、
容姿が端麗だったら誰でも良いってことで、
私じゃない…
格好良いから好き…
性格が良いから好き…
優しいから、面白いから……
そんなものは一人一人が持ってる性質で、私なんかじゃない。つまりその性質が好きだから、私を愛してる。
私が好きじゃないのに、私を愛してるとか、
「こんな可笑しなことってある?トム?」
ペンの動きが止まっている彼に、ワザと名前を呼んだ。
「…ホント、君は哲学的な本を読みすぎだよ。ななし」
だからこそ、面白いんだけどね?
笑っている彼に私はため息をつく。
「……アナタは驚かないのね…」
この事実を知った時、私は不意に怖くなった。
「この矛盾に……」
ならば、
性質を除けていった私という私は
一体何処にいるのか、分からなかったから…
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