短編
□仮面
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…きっかけは一通の手紙だった。
ホグワーツからの入学の手紙…
貰った瞬間、やっぱりって思ったけど、喜びを抑えきれずスキップをしながら部屋へと戻った。
…私の両親はいなくて、ずっと孤児院にいたけど、これからは魔法がある。守ってくれる。
安心感に似た感情を抱いていた私は同じ手紙を持つ男の子を見つけて、更に嬉しくなって声をかけた。
赤い目を持つ男の子で恐かったけど、それでも勇気を持って話しかけた。
「ねぇ…あなたもホグワーツへ行くんでしょう?楽しみね!」
「え……」
……これが、優等生トムリドルとの初めての会話だった。
何も知らない私はそれからも時々彼に話しかけるようになり、グリフィンドールなのに気が付けば殆ど彼の側にいた。
「、のになぁ……」
でもそれは数年前、入学して一二年のことで、今や彼の周りには女の子がいっぱいいて話をするどころか近付けやしない。
「…変わったなぁ、」
取り巻く女の子はそうだけど、彼はいつも笑顔を浮かべるようになった。
剥き出しにしていた感情さえ蓋をしてしまったリドル…
まるで仮面を被ったようで、私は何故かやりきれなかった。
現にコップの中に映る自分は眉を寄せて、しかめっ面だ。
笑ってみせても、コップの中の自分は酷く泣きそうな表情だった。
「何をやってるんだいななし?」
驚いて顔を上げれば、可笑しそうにリドルが笑っていた。
「悩み事があるんじゃない?さっきも何か呟いてたし…僕で良かったら聞くよ」
周りの視線を気にしないで自然と腰をかけるリドルに思わず体を引いて答える。
「いやッ別に、何でもないよ!ホント!」
鋭い視線、特にリドルの視線を背にして急いで部屋へと戻るため食堂を後にする。
部屋に入ると、自分のベッドに軋む音を出して沈み込んだ。
「あなたのことなのにあなたに相談してどうするのよ…」
もう一度ため息をついて、今私が読んでいる純愛ものの小説を手にとった。
「…悩んでてもしょうがないよね…」
挟んでいたしおりを置いて、まだ明るいけどランプに火を灯して漸く本の続きに目を通した。
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