短編
□不老不死を叶えた少女…――
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「おい、転校生が来るらしいぞ!」
「…ホントに?!」
「………」
ザワザワといつも以上にざわめく食堂にいつも通りの食事を取る生徒、トム=リドルは黙って手を進めている。
「ねぇ、トム!聞いた!?今日、転校生が来るんですって!」
近くにいた女子生徒がくだらないことで声をかけてくる。
仕方なく答えようと口を開こうとすれば、
「静まれ、」
ダンブルドア“先生”が声を出し、騒いでいたのが嘘のようにみんなを黙らせた。
…本当にくだらない……
「みんな知ってると思うが今日、新しくホグワーツの一員になる子がおる。ななし、入って来なさい」
扉が開き、少女が入ってくる。
視線が集まる中、少女は気にもとめず長くて黒い髪を揺らし小柄な割に大股で歩く。
前に用意された組み分け帽子まで移動すると彼女はクルリと此方を向いて、お辞儀をした。
「ななし=ナオタケです。」
彼女は髪と同じように黒い瞳を細めてあどけなく微笑んだ。
「どこから来たんだ?」
「東の果ての島国から来ました。そこではみんな同じように黒髪黒眼なんですよ?」
「どうして、此処に来たの?」
「両親の都合で、ですね。でも滅多に帰ってこないから一人で住んでいるのと変わらないんです」
「じゃあ、前に住んでた所は…――――」
沢山質問をするレイブンクローの生徒に冗談を交えながら一つ一つ丁寧に彼女は答えている。
…そう転校生のななしはレイブンクローに入った。
だからスリザリンの僕には関係ないというとそうでもなかった。
驚くことにあの身長と顔で僕の学年と同じだったから。
取り敢えず良い印象をつけるため、一息ついて僕は彼女を取り巻く輪の中に入った。
「もう充分聴いただろう?長い旅をして彼女は疲れてるんじゃない?」
「あぁ!そうだよな…」
そう言えば彼らは渋々と去っていった。
「ありがとうございます。え〜…と、」
「トム=リドルだよ、」
みんな僕の名前を知ってるのに……仕方がないと分かっていても、どこか斬新だった。
「リドルさん、ですね。」
「…――トムで良いよ」
またしても斬新だった。ファミリーネームで呼ぶ人はごく一部の先生だけだ。
「…トムさん、ありがとうございます。では」
彼女はもう一度お辞儀をして、食堂を出て行った。
良い印象をもたれたかどうか分からないけど、僕から彼女への印象は斬新で不思議な奴だった。
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