短編

□不老不死を叶えた少女…――
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彼女が転校してきてから暫くたち、静かになった頃、彼女を見かけなくなった。

しかし、だからと言って僕には関係なく心配している奴らに調子を合わせていただけだった。

だが、気になった点はあった。話し掛けて仲良くしていた同じ部屋の子でさえ、彼女の居場所を知らないという点だった。

消えてしまった少女…―――

と言うのは間違っていた。彼女は先生にちゃんと欠席すると報告しているらしい。


「ま、そんな事はどうでも良い…――今は、」

今は禁書の棚にある本を読む為に図書室に向かっている。

「…――おや?」

角を曲がれば小柄な女子生徒がいた。彼女は此方から歩いてきたかのように同じ方向に進んでいる。

僕の前には誰もいなかった筈…

ましてや今は消灯時間を過ぎている為、生徒に会うとこはない。

不思議に思いながらその女子生徒に声をかけた。
「君、消灯時間は過ぎているよ」


振り返った女子生徒は驚いて目を丸くした。

「トム、さん?」

僕も目を丸くした。深夜徘徊の彼女は消えたと噂されるななしだった。


「…図書室にでも行くのかい?だったらついて行くよ」

彼女の手には数冊、図書室の本があった。

図書室に着くまで彼女はひたすら無言を貫いている。

「着いたよ、」

「………」

いや、図書室に着いてからも無言だった。

僕は仕方なく自分の目当てである禁書の棚へ行き本を取って読む。

「…あなたは、闇の魔法に興味があるんですか?」

今まで無言だった彼女の最初の一言だった。いや、最初は僕の名前だったな…なんてことを考えながら答える。


「…そうだね。強力な魔法が沢山あるし…」

「…そう、」

彼女はいつの間にかまた別の本を抱えていた。


「じゃあ…――不死、とか興味あるんですか?」
目線を上に上げれば、彼女の黒い瞳と交じり合う。

漆黒の瞳はまるですべてを飲み込む闇だった。
いや、闇よりも深い、深遠だった。

…死でさえ、飲み込めるくらいに…―――


「…それは誰しもが望む願望だよ」

「…そう、ですね、」

彼女はゆっくりと近付き、僕の隣に立った。


「誰だって…望む、願望…――矛盾した願い…」

彼女は手元にある一冊の本を開いた。


「…――知ってますか、こんな御噺…」











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