短編
□気付いた感情
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「レギュラス君レギュラス君!
私、大事なことに気付いちゃいました!」
放課後、いつものように図書室で本を読んでいるとスリザリンなのにいつもグリフィンドールと絡んでいるななし先輩がきた。
「先輩…静かにしてください。此処は図書室です」
「はぁ〜い。……ていうかさ、いつも思うんですがレギュラス君私に厳しくないですか?」
「………」
先輩のクセに(変な)敬語を使う彼女…別に構わないが、敬語は相手を敬っているということだ。
…彼女はきっと、分かってない。
まぁ僕も言えないが、
「レギュラス君!聞いてますか?」
「…えぇ」
「じゃあ、教えて下さい!何で私が嫌いなんですか?」
…話が飛躍しすぎて分からない。僕がいつ、彼女を嫌いだなんて言った?
確かに彼女のことを不愉快だと思うときがある。でも、それは…
彼女が…
「…嫌いじゃないですよ。」
「、なら!なんで私に」
「っ、貴方がグリフィンドールなんかと関わるから!」
声を荒げた僕にななし先輩は目を丸くする。…僕だって、多分、彼女よりも驚いている。
「…とにかく、もう関わらないで下さい。」
司書の目が厳しくなりこれ以上居られなくなった僕は先輩から逃げるように図書室を出た。
なのに、
「…なんで、付いてくるんですか、先輩」
どんなに早く歩いても一行に縮まらない差に苛立ちながら尋ねる。
「…だから、私、大切なことに気付いちゃったんですって!シリウスとお話してて…同じ兄弟なのにレギュラス君と話している時とはなんか、違ったんです」
「…、何を言いたいんですか?」
冷たい言葉と突き刺す視線…―――
足を止めて視線だけを向ければ彼女の鼻が僕の背中に当たった。
「、だから…」
「私はレギュラス君のこと好きだって気付いたんです!」
「友達じゃなくて、一人の男の人として!」
ニコニコと天真爛漫に笑っている彼女に僕は平静を装ってため息をつき、また歩き出した。
「ちょっと!レギュラス君!」
スリザリンなのに、先輩はグリフィンドールのあの人と仲が良かった。
その時ばかりは先輩を憎んでいた。
自分でもあの人にコンプレックスを抱いていると自覚している。
だから、
先輩とあの人が関わることに苛ついていた原因は寮が違うだけな…バズだったのに、
「先輩、僕も大切なことに気がつきましたよ…」
「へ?」
いきなり足を止めた僕に今度はぶつからずに先輩は立ち止まった。
少し感じた退屈さに自然と悪戯な気持ちが芽生えた。
「僕も、好きですよ。愛してます」
少し笑ってそう言えば、先輩は普段見せない位に顔を真っ赤にした。
その様子に更に笑みを零し僕は歩き出した。
余程衝撃を受けたのだろう、あれほどしつこくついてきた先輩は足を固定されたように動かなかった。
たぶん、僕も彼女も今の今まで気付いてなかったのだろう。
この、居心地の良い、暖かい感情に。
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