短編
□とあるスリザリンの仮面の下
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「僕と付き合って欲しい」
「え!え、えっと…その、」
跪いた僕に女は顔をこれほどにない位赤くして慌てていた。…スリザリンらしくないその態度だが、付けているネクタイは緑と銀…
だから、余計に苛立った。
スリザリンの貴族で純血で、有名な家系なのに女は点でハッフルパフみたいに馬鹿だ。
僕の欲しい物を持ってるこの女が…―――
だから、僕はあの女を憎んだ…―――
「ななし、」
「ト、トム?」
顔を真っ赤に染めて上擦った声を出して見上げてくるのは今、付き合っている恋人のななし…
勿論、純血だ…しかしたかが純血ならそこら辺にいる。わざわざななしを恋人にしたのはななしの家つまりその地位を手に入れる為だからだ。
「ななし、僕は君と付き合い始めて三ヶ月になる」
腰に回している腕を更に引き寄せて体を密着させ、空いている手をななしの頬に添える。
「あ、」
「…君は不思議な女性だよ、ななし。君のことは何でも知ってる筈なのに、一日一日とまた新しい君を知っていく」
両腕で強く抱き締めれば、ななしはゆっくりと僕の背中に手を回そうとする。しかし僕は拒むように突然に体を放した。
驚いて見上げているななしに僕は完璧な笑みを浮かべてもう一度頬に手を置いた。
「ねぇ…君は一体、どれほど僕を魅了すれば気が済むんだい?」
綺麗事ばかり吐き出す口…―――
「もっと君の事を深く知りたい…」
穢れを知らない瞳…―――
「誰にも曝け出したことのない君を…」
あぁ…―――
汚して、堕として、
「僕だけに見せて?」
僕だけの玩具にしてやる
耳元で甘く囁けばななしは耳まで赤くしてコクリと頷いた。
あぁ、
女なんて、みんな馬鹿ばかりだ。
群がるようにして集まってくるあの蠅のような奴らは
口を開けばくだらない低俗な噂ばかり
男を漁る為に自ら着飾り、まるでその地位を自分で勝ち取ったかように振る舞う愚か者達…
実に愚かで、醜く、浅はかで…――
とんでもなく、おめでたい奴らだ。
僕の容姿に惑わされ、熱く想いを寄せてくる奴や
孤児院の出身だからと言って勝手に同情する奴、
賢くて優等生だからと近付いてくる奴ら、
みんな、
優しい言葉をかけて体を重ねればあっという間に僕の言いなりになった。
この女だってきっとそう…
綺麗な顔立ちの下に醜い女を隠している。
「トム、見てください。」
僕がその化けの皮を剥いでやる。
「これが、本当の私です!!」
「!?」
彼女の部屋に連れてこられた僕は目の前の風景に白く固まった。
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