短編
□とあるスリザリンの仮面の下
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「動かない写真を写すカメラに、マッチとランプ!喋らない絵や彫刻っ!
全部、全部っ、ステキだわ〜っ!」
「な、ななし…?」
染めた頬に手を当ててはしゃぐななしに乾いた声音しか出てこない…
「あ、トム!タイプライターを知ってますか?!これはスリザリン生にはいなかったんでグリフィンドール生のマグルから格安で譲ってもらったんで「ななし」
「あ、ごめんなさい…一人で盛り上がってしまって…」
白く固まる中、暴走したななしはようやく僕の方を見た。が、
「あの、私……小さい頃にマグルの世界で両親とはぐれてしまって迷子になったことがあったんです…」
…は?
「その時、偶然に出会った男の子が案内してくれて何とか両親と会えたんですけど…それ以来、マグルへ行くことを禁止されて…
だから、私、マグルのことを調べ始めたんです!」
「……」
苦しそうに眉をひそめて語り出す表情からキラキラと楽しそうな表情へと変えたななしは終始微かに頬が赤く、僕は何とか笑みを湛えた。
「段々と調べていく内に、
気付いたら私、
マグルについて果てしなくときめきを感じるようになってしまって…」
「……っ、」
ふわりと笑うななし。
何かが溜まってゆくのを感じながら僕は何とか微笑み続ける。
「そういえば、アブラクサスさんから聞いたんですけどトムってマグル生まれで差別をしない優しい方だとお聞きしました!」
「………っ、」
マグル学の本を出してきたななしに抑えていたものに口が膨らむのを感じた。
「私!是非ともマグルについてトムと語り合いたいと思って―――」
「いい加減にしろっ!!!」
はっ!と出てきた言葉にななしが驚くが吐き出てくるものは止まらない。
「さっきから黙って聞いてれば、マグルマグルと穢れた血の話ばかり!お前は純血だろっ!!」
「言っておくがっ、僕は昔っからマグルが…―――大っ嫌いだ!!!!」
ドンッ!と机を叩けばしん…と空気が静まり返る。
「………!?」
少し乱れた息にようやく僕は我に返った。
「(……しまった…!!)」
「ご…」
顔を背けて慌てて口を押さえても出してしまった言葉は戻らない…
「ごめんなさい…私…」
ふるふると震えるななしは目に涙を溜めて下を見ている。
「勝手に勘違いをしてしまって…トムを…私と同族だと思い込んでしまうなんて…」
背を向けてる僕に容赦なくその声音は責め立てきた。
「そうですよね…スリザリンは純血主義…そんなこと、あるはずないですよね…」
「……………!」
震えだした声音に僕は嫌に汗が垂れる。
「私のことなんて…もう、嫌いになりましたよね?」
涙を溜めて頬を赤くしたななしはきつく目を瞑った。その瞬間、僕は己の手をきつく握り締め、
「ま、まさか…!」
今まで一番の笑顔を浮かべて振り返った…
……
「……はぁ…」
「……………?
我が君、どうかしまし、」
「アブラクサス。良かったな。貴様が初めての死の呪文の練習台だ!」
「わ、我が君!?」
「…………はぁ…」
「我が君…ほんと、どうしたんだよ…?」
「オリオン…貴様は約五時間マグルについて聞かされた後どうして欲しい…?」
「……お疲れ様です。おやすみなさい、我が君」
「…あぁ、」
中の人でパロディ!(笑)