短編

□双子の暗黙の了解
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※本編と違う双子設定






普通とは違う、歪んだ双子は最悪なくらいに喧嘩する…

お互いが自分に似すぎていると好きになれない…同族嫌悪とか言うやつだ…

しかし、この二人は…


「…そこをどけ、ななし」

抑揚のない声音を出すカタワレに不健康なくらいに青白い肌をもつ少年のような少女、ななしは更に深くソファーにもたれた。


「どけと言ってるのが聞こえないのか、ななし」

「、聞こえてる」

先程よりも音の音量を上げたがやはり、抑揚のない声音。
まるでステレオタイプ。

…みんなの前では愛想良く笑い丁寧な言葉遣いなのに、

ななしはイライラを吐き出すようにため息をつき、カタワレのトムを見た。トムはじっとななしを見ており、ななしはもう一度ため息を吐き出したい気分になる。

「分かった、」

ダラダラと1oづつ寄るななしにトムは耐えきれずに舌打ちし、ななしの隣に押し入るように座った。


「……。キッツ…」

「僕が正しく座ってキツいと感じるのは君がだらしなく座ってるからじゃないかい?」

ななしの心を見透かしたように笑みを浮かべ丁寧な言葉を使い出したトムにななしは顔をしかめた。

「止めて。その話し方…ウザい…」

感情のない、それこそ先程のトムと変わらない声音にトムは鼻で笑う。


「愛想良く笑って丁寧な言葉遣いにしろと思ったのはななしだろう?」

「そんなこと思ってない…ただウザいと思っただけ。…つうか、やっぱり開心術使ってたんだ…。
私に向かって勝手に開心術を使わないでっていつも言ってるんだけど?」

ぎゅっ、と軽く体ごと押しやってきたななしにトムは横目で睨む。
がしかし、薄ら笑いのななしの向こう側を見れば、一瞬瞳を大きく開いたかと思うと、益々瞳を鋭くさせた。


「ななしっ!まだ、そっちに隙間があるじゃないか!」

「…知らな、」

ヘラヘラと笑うななしに彼女のカタワレは眉をひくつかせ、黙ったままななしをソファーの隅へと押しやった。

ようやく、トムは普通に座れた。


「っ…―――ヴォル、」

「何だい?ななし?」

地を這うような冷たい声音で己で付けた名前を読んだななしにトムは赤い瞳をギラギラと輝かせて、冷徹に見下ろしたように笑った。

「…ウザ」

対照的な怒りを表したななしはしかし、トムと同じように瞳を赤く燃え上がらせた。

そうして彼女は押し合いを止めて、
油断している自分のカタワレを力いっぱい、突き落とした。

「、」

呆気にとられたトムは重力に従ってソファーから落ちる。

上半身への衝撃…

彼は丸くしていた目をだんだんと細めていく。

彼は瞳を赤く赤く染めてゆく。

体を起こし標的を見据えた瞬間、トムはまたまた呆気にとられ、今度は怒りが風船の空気が抜けるように萎んでいくのを感じた。


彼女は膝を抱えてうずくまっていた。


「…何か言うことがあるだろう?」

盛大にため息をついて、当たり前のようにソファーに腰掛けたトム。


「…ある。座んな」

まるですべてを拒絶するかのように丸まったななし。


「…全く、もう少し女らしい言葉遣いをしたらどうだ?」

「うっせ……」

此処でようやく持参した本を広げたトムにななしは少し軽く体を当てた。
当たってきたななしにトムは怪訝な視線を向けたがすぐに本へと戻す。



…歪んだ双子は衝突が絶えない。

しかし
仲はそれほど悪くなく、何らかの絆で結ばれている…




ななしはソファーの横へと足を出しトムにもたれた。

…トムは本から目を離さず、だらけたカタワレを肘でついた。


…彼ら以外誰もいない談話室…

他の空いているソファーを当然であるかのように、彼らは無視していた……











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