創作

□戦子
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俺の生まれた国は戦争国だ。
ずっと人が足りず、少年兵どころか、少女兵まで使われる。
そんななか、俺は6歳のころから銃を握り、手榴弾を懐に忍ばせる生活をしていた。
俺の家には姉と小さな妹が居た。
両親はとっくに戦死していた。
俺は姉と妹を守るため、人を殺した。
家族を守るため、俺にはそれしかできなかった。
たくさん人を殺めれば高い地位にいられる。
家族に小隊長以上がいる家族は戦力として徴集されない。

俺は人を殺めた。ただの人形のように。

俺は若干15歳にして大隊長の地位にいた。
しかし、俺が大隊長になって1年後。俺の隣に二人はいなかった。
俺がいないときに殺されたのだった。
二人をころしたのは俺が殺した誰かの子供だった。
俺が家に戻ったとき、そいつは二人の血で染まったナイフを俺に向けながら憎しみに染まった目で、俺を睨んだ。
「お前が父さんを殺したんだ。その報復だ!」
俺は感情に任せるままそいつを殺した。
しかし、俺は気づいた。
あぁ、俺はもう戦う意味は無いんだ。
俺は守ろうとしたものを失ってしまった、と

そう思うと笑いがこみ上げてきた。
なんて皮肉なんだろう。
自分で守ろうとしたものを自分のせいで失ってしまった。
笑いが止まらなかった。
なぜか涙はこぼれなかった。
そして、俺は自分の体を少年が持っていたナイフで突き刺そうとした。
しかし、死ねなかった。
いまさらになって死ぬのが怖くなったのだ。

あんなにたくさんの人間を殺めてきた俺が。

たくさんの死を目の当たりにしてきた俺が。

自分の死に恐怖したのだ。
自分が醜くてしょうがなかった。
それから俺は大隊長として、人形のように国に貢献した。
これで戦争に負けてしまったら二人はただの殺され損だからだ。

しかし、2ヵ月後、俺の国は戦争に負けた。
そして俺はA級戦犯として、周りから憎み、蔑む対象にされた。
「死ね。」「お前のせいで負けた。」「人殺し。」
守ってきたものたちからの罵詈雑言にさらされ続けた。

俺は敗戦した10日後、二人を埋葬した小高い丘の上にいた。
村人に連れてこられたのだ。
ここがお前の死に場所だと。ここで死ねと。
そして俺は二人を刺し殺したあのナイフで自分の胸を突き刺した。
ほんとは二人も分も生きたかったんだけどなぁ。


俺はいま、一人の幽霊を虐めている。
ぬくぬくと温床で育った、ただクラスメイトに無視され、少し陰口を言われただけで自分の命を絶った、軟弱な幽霊だ。
俺の家族はいきたくても生きられなかったのに、生きられる環境にいるものが自分で命を絶つことが許せなかった。
事情を知らず、ただ自殺と馬鹿にするやつも許せなかった。
あんな軟弱なやつと同じにされたくなかった。
「それぞれ国には事情があるんだよ。」
そんな言葉で逃げたけれど、俺が人を殺めたことには変わりない。
だから、地獄へ行くために、自分が自殺したことを後悔させるために、俺はいじめ続ける。

ごめんな二人とも。
お前らのとこいけそうにねぇわ。

ごめんな姉さん。最期までだらしねぇ弟で。

ごめんな。かっこわりぃ兄ちゃんで。

ごめん二人とも。天国で幸せに暮らしてくれよ。

それが俺のたった一つの願いだから。

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