創作

□作り笑顔
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「嘘吐き!私の事愛してるって言ってたのに」
あぁ、あのときの女か。一度でいいって言うから一度だけって言ったのにな。
「あぁ、だって今だけでいいから、私の事愛してって言ったから。」
「何で!?あんたは好きでもない女とあんなことできるわけ?」
少しは場所を考えて叫んでくれよ、と俺は思った。
ここは公園である。夜だとは言えまだ周りの家にも明かりがついている時間帯だし、子供の教育上にもよろしくないだろうなぁと考えながらいつもどおりの受け答えをする。
「あぁ、できるよ。俺はね、別にフェミニストなわけじゃない。ただ女が好きなだけだよ。」
「信じられない!」
「あぁ、信じられなくてもいいさ、実際にそういう男がいるってことには変わらない。話は終わりか?なら俺は帰るぜ。家に人待たしてるからな。」
そういって俺は踵をかえし家に戻っていく。後ろでまだ何か言っているが無視。いつもの通りの対応。いつもどおりこれで終わりだと思っていた。が甘かった。それが後に悲劇を生むなんて俺はまったく思っていなかった…

そんなことがあってから三ヵ月後。
俺が喫茶店でコーヒーを飲みながらボーっとしていると1人の女が声をかけてきた。
「君が○○君かな?」
自分の名前は覚えていない。ここで暮らしていくうちに少しずつ生前の記憶が消えている。でも、いい女だったのは覚えている。
「そうだけど。おねーさんは誰?」
「私は、とある記者よ。君みたいな女ったらしの男の子に取材をしている、ね。」当然のような顔をして隣に座ってきた。
「あっそ。で、俺に取材?」
俺は自分で言うのもなんだがまぁまぁ顔はいいほうだからたまに街角で声をかけられる。だから取材は結構慣れているものだ。でも、その女が聞いてきたのはいきなり俺の過去をえぐる話だった。
「そうよ。私が知りたいのはひとつ。なんであなたはたくさんの女の子と遊んでいるの?」
「そんなの女が好きだからっすけど?」
「嘘。」
いきなり全否定してきやがった。でも確かに嘘だった。でもそのまま認めるのも癪に障るので、問いかけてみた。
「何でそう思うンすか?」
「きみのことを数日だけど観察させてもらった。君は女の子といるとき、目の奥が笑ってないの。悲しい、深い色になる。」
はっきりと俺の目を見て言い切った。まじめな瞳。ただ真実だけを求めてきた人の目だと思った。
「あんま意識してないつもりだったんですけど。やっぱりあなたみたいに観察眼の鋭い人にはばれてしまうんですね。」
「まぁ、それが仕事だからね。」記者さんは苦笑した。
「じゃあ、話しますけど、ここじゃ何なんで個室で。あまり人に聞かれたくない話なんで。」
俺はそういって常連さんだけが使える個室にマスターに許可を取って入っていった。
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