黒子のバスケ

□【黒子は僕です】
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第1Q 黒子は僕です

「ねぇ。火神くん。」
「なんだ。黒子?」
昼下がり。
部活が始まる前、遊んできたばかりなのでお互い私服で、なんとなく違和感を覚える。
黒子はベンチにねっころがってボールで遊んでいる。お互い何もしゃべらない空間で、気を抜くと黒子の気配を見失いそうになる。
それくらい儚げな気配。
守りたくなるのに、
守らせてくれない。
自分で、ひとりで前に進んでしまう。


先輩達はまだ来ていない。
「ねぇ、火神くん。」
すっと片手でボールを持ち上げる黒子。それを見つめたまままた俺の名を呼ぶ。
「だからなんだって。」
「黒子は僕です。」
「いきなりなんだよ。」
「僕のこと、見失わないでください。」
ボールをじっと見つめたまま、黒子は動かない。
「…ちょっと無理かも…」
こんなに影の薄い奴だから、いくら大切な人間だからとはいえ、見失ってしまう気がする。
「ひどいです。影って光が強すぎると溶けてしまうんですよ?」
ああ、そういうことか。
「大丈夫だ。置いていかねぇよ。お前のことを忘れて前になんて進まねぇ。」
バスケットボールを手でよけて、黒子の目を見ていう。
「なら、いいんです。」
黒子は満足そうに微笑んだ。

俺はゆっくりと唇を合わせた。
キスし終わったあとの黒子は、とても優しい顔で微笑んでいた。

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